研究ニュース

生き物らしい動きを捕らえる視知覚の発達過程を解明自閉スペクトラム(ASD)発症機構の解明に期待

【ポイント】

  • 卵にネオニコチノイドを投与すると、ヒヨコに自閉スペクトラム症様の視知覚障害が発生。
  • ASDに治療効果が示唆されるブメタニドを孵化直後のヒヨコに投与すると、その障害が消失。
  • ヒヨコの行動の解析から、ASDの発症機構を解明する手掛かりが得られるものと期待。

【概要】
北海道大学の松島俊也名誉教授(元大学院理学研究院教授、北海道医療大学学外研究員、トレント大学客員教授)、北海道医療大学薬学部の三浦桃子助教、北海道大学大学院理学研究院の田路矩之博士及び和多和宏教授らの国際共同研究グループは、卵の中の胚にニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)の伝達を阻害・攪乱する薬(ネオニコチノイドなど)を投与すると、孵化したヒヨコに自閉スペクトラム症(ASD)に類似した視知覚障害が現れることを発見しました。

ASD児は生物的運動(BM)、つまり生き物らしい運動を捕らえる視知覚が弱いことが知られています。卵の中の胚に薬を投与すると、孵化したヒヨコのBM選好性が有意に障害されました。しかしヒヨコにあらかじめブメタニドを投与しておくと、有意な影響は現れませんでした。

ブメタニドは一部のASD児に限定的な治療効果があることが報告されています。これらの結果から、ヒヨコはASDの疾患モデル動物として有効であると考えられます。

今後、ヒヨコの視知覚障害のメカニズムを研究することによって、ASDの発症機構の解明に寄与すると期待されます。

なお、本研究成果は、2022年11月18日(金)公開のCerebral Cortex Communications誌にオンライン掲載されました。

論文名:Fetal blockade of nicotinic acetylcholine transmission causes autism-like impairment of biological motion preference in the neonatal chick(胎児のニコチン性アセチルコリン伝達を阻害すると、初生雛の生物的運動選好性に、自閉症様の不全がひきおこされる)
URL:https://doi.org/10.1093/texcom/tgac041

詳細はプレスリリースをご覧ください。