研究ニュース

大雪山系標高1850mから新種のカイミジンコを発見

【ポイント】

  • 国内初報告となる高山帯生カイミジンコを発見し,新種であることを明らかに。
  • 北海道大雪山系内の水温2〜6℃の冷涼な河川のみに生息する固有種である可能性を示唆。
  • オスの不在と共生細菌の存在から,メスだけでふえる単為生殖種である可能性を示唆。

(写真)左:シバレドウクツカイミジンコ(左側面;エタノール固定標本),右:北海沢での採集調査の様子。

【概要】
北海道大学大学院理学院博士後期課程の宗像みずほ氏,同大学院理学研究院の角井敬知講師,葛西臨海水族園の田中隼人動物解説員の研究グループは,北海道大雪山系の高山帯河川から新種のカイミジンコを発見しました。

高山帯には過酷な環境に適応した生物や氷河期の遺存種などユニークな生物が生息しており,それらには各高山帯の固有種も多く含まれています。カイミジンコは二枚貝のように体の左右に2枚の殻を持った小さな甲殻類(エビなどの仲間)です。海域から淡水域までのあらゆる水環境に生息しており,国内からはこれまで約100種の淡水・汽水性種が報告されていますが,高山帯からの報告はありませんでした。今回,大雪山国立公園内の河川や池で採集調査を行ったところ,高山帯を流れる北海沢ほっかいさわという河川からドウクツカイミジンコ属の1種が得られました。本種を詳細に観察したところ,既知の種のいずれにも該当しない特徴を有する未知の種であることが明らかになったため,新種Cavernocyprisカベルノキプリ hokkaiensis  ホッカイエンシス(和名:シバレ ドウクツ カイミジンコ)として報告しました。また分布調査・飼育観察などの結果から,本種は水温2〜6℃と冷涼な北海沢のみに低密度で生息している,メスだけでふえる単為生殖種である可能性が示されました。

今後,他の高山帯での採集調査とDNA配列情報を用いた研究が進むことで,さらなる未報告種の発見や,高山帯生種の起源や分布形成史の解明が期待されます。シバレドウクツカイミジンコの住む高山帯は温暖化などの環境変化の影響を強く受ける環境です。そのため本種は存続の危ぶまれている種である可能性があります。今後さらなる生態的・生物学的情報の蓄積が望まれます。

なお,本研究成果は,2022年4月5日(火)のZoosystematics and Evolution誌にオンライン公開されました。

論文名:Taxonomy and natural history of Cavernocypris hokkaiensis sp. nov., the first ostracod reported from alpine streams in Japan.(国内初報告となる高山帯生カイミジンコの1新種の自然史と系統分類学的研究)
URL:https://zse.pensoft.net/article/80442

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