深い海の底からアシタラズのウミナナフシの新種を発見
【ポイント】
- 三重県沖水深805‒852mの深海底からウミナナフシの新属新種を発見。
- 第7番目の歩行用の脚を持たないという珍しい特徴を示す種。
- 日本近海のウミナナフシの潜在的な多様性の高さを示唆。
【概要】
北海道大学大学院理学院修士課程の白木祥貴氏,同大学院理学研究院の角井敬知講師,京都大学フィールド科学教育研究センターの下村通誉准教授の研究グループは,三重県沖の深海底からウミナナフシの新属新種を発見しました。
ウミナナフシは,ワラジムシやダイオウグソクムシなどが含まれる等脚目(とうきゃくもく)というグループの一員で,一部の淡水性・汽水性種を除き海域に生息しています。日本近海からはこれまで12属42種が報告されていますが,深海性種の研究は非常に限られていました。今回,研究船淡青丸の航海中に三重県沖の水深805‒852mから採集されたウミナナフシの1種について詳細な形態観察を行ったところ,既存の属のいずれにも該当しない特徴を有する未知の種であることが明らかになったため,新属新種Deltanthura palpus(デルタンツラ パルプス、和名:サンカク アシタラズ ウミナナフシ)として報告しました。
深海底に潜む小型生物の多様性については,採集の難しさに加え,当該生物の正体を明らかにできる専門家が多くないことから特に理解が遅れています。しかし豊かな地球の生態系を守っていくためには,あまりヒトの目に触れることのない深海生物を含めた総合的な生物多様性の理解が欠かせません。これからも一歩ずつ着実に記載分類学的研究を推し進めていくことが強く望まれます。
なお本研究成果は,2022年3月31日(木)にZoosystematics and Evolution誌にてオンライン公開されました。
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