研究ニュース

磁気渦の中心で揺らぐ電気四極子スピン電子軌道が結合した新しい量子情報素子の実現に期待

【ポイント】

  • 蜂の巣構造における渦状の磁気秩序の中心で,常磁性状態を保つ電気四極子の応答を観測。
  • ウランを含む単結晶を極低温(~0.04K)まで冷却し,強磁場下(<28T)で弾性率を精密測定。
  • 極低温・強磁場領域まで磁場-温度相図を拡張し,高磁場に新しい秩序相を発見。

(右:UNi4Bの結晶構造と磁気渦の概念図)

【概要】

北海道大学大学院理学研究院の柳澤達也准教授,東北大学金属材料研究所,ヘルムホルツ研究センタードレスデン強磁場研究所(ドイツ),ドレスデン工科大学(ドイツ)及びカレル大学数物理学科(チェコ)の国際共同研究グループは,「蜂の巣構造」を持つウラン化合物が形成する磁気渦の中心で,秩序せず自由度を保ち続ける「電気四極子」の存在を初めて捉えることに成功しました。

記憶素子の微細化や量子コンピュータの実現に向けて,新しい量子自由度が示すナノスケールの秩序構造が注目されています。その中でも磁気渦の研究は,磁化率や中性子散乱実験などの電子のスピン自由度を観測する磁気測定によってこれまで中心的に行われてきました。一方,電子の持つもう一つの自由度である「軌道自由度」に関しては,磁気的な自由度とは対称性が異なる電気的な自由度であるため,実験の難しさからあまり研究が進んでおらず,磁気渦中において電気的な自由度がどのように振舞っているのかが未解明の謎として残っていました。

今回研究グループは,金属化合物中の電子の軌道自由度を敏感に観測する精密超音波測定法と国内外の最先端の強磁場発生装置を組み合わせ,UNi4B(U: ウラン,Ni: ニッケル,B: ホウ素)という物質が示す渦状の磁気秩序下で,電子の軌道自由度に由来する「電気四極子」を精密測定しました。

その結果,本物質の磁気渦と電気四極子の応答に強い相関があることが明らかになりました。本研究成果は,同様の磁気渦を示す物質の理解を進めるとともに,固体中の電子の持つ多様な量子自由度を制御し,それらを応用に結びつけた全く新しい量子情報素子の実現に向けた足掛かりになると期待されます。

なお,本研究成果は,米国の科学誌Physical Review Letters誌(オンライン版)に2021年4月12日(月)にオープンアクセスで掲載されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。