昆虫の嗅覚中枢には並列的な情報処理経路がある
【ポイント】
- ワモンゴキブリの抑制性ニューロンがキノコ体のフィードバック経路を担うことを解明。
- フィードバック経路には2つの並列した経路があり,2つの経路の間で相互作用があることを解明。
- 動物の嗅覚情報処理系の基本構成についての理解に大きく貢献。
【概要】
北海道大学大学院生命科学院博士後期課程(当時)の高橋 直美 氏,電子科学研究所の西野 浩史 助教,大学院理学研究院の水波 誠 教授らの研究グループは,昆虫(ワモンゴキブリ)の脳の高次嗅覚中枢(キノコ体)に投射する抑制性ニューロンに着目し,それらがキノコ体出力ニューロンからシナプスを受けて,キノコ体出力ニューロンの匂い応答の強度を適正なレベルに調節するフィードバック経路を担っていることを突き止めました。さらに,キノコ体のフィードバック経路には,匂い受容ニューロンのタイプの違いに由来する2つの並列的な経路があること,また2つの並列経路の間に相互作用があることを見出しました。
この発見は,動物の嗅覚系において,受容ニューロンから高次中枢に至るまで一貫した並列的な情報処理経路が保たれていることを初めて明らかにしたもので,ヒトなどの哺乳類の脳がもつ嗅覚情報処理系の基本構成の理解にも示唆を与える重要な成果と言えます。
なお,本研究成果は,2019年9月23日(月)公開のThe Journal of Neuroscience誌に掲載されました。
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