物理学部門 吉田紘行准教授の論文がJournal of the Physical Society of Japan誌のMost Cited Articles in 2018に選出

吉田 紘行

物理学部門

2019年5月27日

北海道大学大学院理学研究院物理学部門の吉田紘行准教授、大阪大学先端強磁場科学研究センター、同大理学部、物質・材料研究機構、高エネルギー加速器研究機構からなるグループが執筆した論文^*が「Journal of the Physical Society of Japan」誌のMost Cited Articles in 2018に選ばれました。

この論文は、新物質CaCu₃(OH)₆Cl₂•0.6H₂O（Caカペラサイト）の発見とその風変わりな性質を報告したものです。Caカペラサイトは竹細工の籠目編みと同じ編み目構造を取る数少ない磁石です。磁石とは物質の中の最小の棒磁石である電子スピンが全て一方向に規則正しく並んだ固体ということができます。一般に、固体の一箇所を叩くとその衝撃は固体内を波として伝わることが知られています。磁石でも同じようなことが起こり、規則正しく並んでいる電子スピンを一つ反転させると、その影響は物質内を波として伝わります。吉田准教授らは Caカペラサイトの性質を精密に観測することで、この電子スピンの波に加えて、反転スピンの影響があたかも金属内の電子のように”粒子”として自由に動き回る振る舞いを観測しました。このような粒子は絶対零度でも凍らずに動き回ることができ、超伝導の発現機構にも関係する可能性があります。籠目の幾何学が引き起こすこのような風変わりな性質を解明することで、未だ謎の多い量子スピン液体状態の解明にも発展することが期待されます。

^* Unusual Magnetic State with Dual Magnetic Excitations in the Single Crystal of S = 1/2 Kagome Lattice Antiferromagnet CaCu₃(OH)₆Cl₂•0.6H₂O

論文概要はこちらをご覧ください。