特定の信号で自発的に「群れ」をつくる分子ロボットの開発に成功
- ロボットの3要素である「動く・考える・感じる」のすべてを備えた分子ロボットを開発。
- 特定の信号を感知することで,自発的に「群れ」を形成・解消でき,理論演算も実行可能。
- 医療現場などで活躍するナノマシンとしての応用展開に期待。
北海道大学大学院理学研究院の角五 彰准 教授,関西大学化学生命工学部の葛谷 明紀 准教授らの研究グループは,ロボットに必要な3要素である駆動系(動く),知能・制御系(考える),センサー(感じる)を備え,群れのように振る舞う分子ロボットの開発に世界で初めて成功しました。
ロボットの一種に,鳥や魚のような群れを再現する「群(ぐん)ロボット」 があります。群ロボットは,リーダーがいなくても自発的に環境に合わせて群れの形を変えるほか,仕事を効率よく分担したり,不具合を補い合ったりするなど,単体のロボットでは不可能なこともできるのが特徴です。医療や災害の現場での応用が期待されており,世界的にも競争の激しい分野ですが,ミクロサイズのロボットの開発は難しく,これまで成功例はありませんでした。本研究では,機械による従来のロボットではなく,化学的に分子部品を組み立てることで,世界最小の群ロボット(分子ロボット)を作りました。
今回の分子ロボットは,私たちの細胞内で物質輸送に使われているモータータンパク質と遺伝情報を記録するDNAが組み合わされており,ロボットの3要素では前者が駆動系,後者が知能・制御系に相当します。さらにセンサーとして,光を感知する色素をDNA に人工的に組み込みました。これにより,化学的信号だけでなく光などの物理的信号を感知し,自発的に群れたり別れたりする分子ロボットができました。将来は,体中などで働くナノマシンとしての応用が期待されます。
本研究では,北海道大学が駆動系の設計,分子ロボットの組み立てと集団運動の実演を,関西大学が知能・制御系部分の化学合成とセンサーの組み込みを担当しました。本研究成果は,英国時間2018年1月31日(水)公開のNature Communications誌に掲載されました。
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