研究テーマ | 分子構造に基づく生体金属および金属蛋白質の構造および機能的解析とその分子設計 |
研究分野 | 生物無機化学, 分子分光学, 構造生物学, 物理化学, 生物物理学 |
キーワード | 生体金属, ヘム・ポルフィリン, 金属蛋白質, 細胞内鉄代謝, ミトコンドリア呼吸鎖, 電子伝達反応, ナノディスク, 蛋白質立体構造形成反応 |
研究紹介
すべての生物はその体内に特定の遷移金属を保持しており、それらはごく微量であるにもかかわらず、その生物が生命活動を維持するのに必須の元素である。遷移金属は、2010年に鈴木章北海道大学名誉教授とともにノーベル化学賞を受賞された根岸英一パデュー大学特別教授が「Magical Power of d-Block Transition Metals」と評したように、化学反応の触媒として、他の元素では実現できない多様で特異的な特性を示すことが知られており、生物はこれらの生体金属の特徴を熟知して生命活動を営んでいる。したがって、生体内における生体金属や金属蛋白質の機能や構造の分子論的解明は、生命現象の分子レベルでの理解に必須である。そこで我々はこのような生体金属のうち、生体内でもっともその含有量が多い鉄に注目して、特に鉄ポルフィリン錯体であるヘムを活性中心として含むヘム蛋白質を中心に、その構造的、機能的解明を進め、生命現象の分子論的解明とその制御の可能性を検討している。具体的な研究対象としては、図1に示すような細胞内鉄代謝における制御機構の分子論的解明に取り組んでいる。細胞内鉄代謝はその破綻により、肝炎や神経疾患などの重篤な疾病につながることから、その制御機構の解明は臨床治療や創薬設計の重要な指針となる。さらに、酸素呼吸生物におけるエネルギー産生機構であるミトコンドリア呼吸鎖(図2)にも注目し、そのATP産生を駆動する電子伝達反応の分子機構の解明も目指している。この生体内における電子伝達反応の機構解明とその制御は、生体材料を用いた電子デバイスの設計にも重要な知見を与える。このような電子伝達反応をはじめ、生体内の蛋白質の多くは膜結合蛋白質であり、これまでの研究では、その可溶化に必要な界面活性剤の非特異的な結合により、膜結合蛋白質の機能や構造に大きな影響を与えることが指摘されている。そこで、生体内膜結合環境により近い状態で種々の測定を行うため、直径10 nm程度の円盤状脂質であるナノディスク(図3)を用いた膜結合蛋白質の構造、機能測定法の確立も進めている。一方、このような多様な機能を示す蛋白質の構造・機能設計を目指して、その立体構造構築反応(蛋白質折れ畳み機構)(図4)の分子論的解明も試みており、従来の分子分光学的手法に加えて、分光学的手法における圧力効果の導入や数学的なネットワーク理論による解析などを取り入れることで、これまでにない多面的なアプローチを展開している。
代表的な研究業績
関連産業分野
学位 | 工学博士 |
自己紹介 | 出身は京都市内ですが、伏見の郊外でしたので残念ながら「京都人」ではありません。ヘモグロビンから始まった金属蛋白質の付き合いも、もう30年を超えました。京都のときは研究の合間に吉田山から真如堂、札幌に来てからは週末の円山山頂までの散歩が良い気分転換でしたが、最近はさぼり気味です。 |
学歴・職歴 | 1984年 京都大学工学部石油化学科 卒業 1986年 京都大学大学院工学研究科分子工学専攻 修士課程修了 1987年 日本学術振興会特別研究員 1989年 京都大学大学院工学研究科分子工学専攻 博士後期課程修了 1989年 京都大学工学部 助手 1995年 京都大学大学院工学研究科 助教授 2005年 北海道大学大学院理学研究科 教授 2006年- 北海道大学大学院理学研究院 教授 |
所属学会 | 日本生物物理学会, 日本生化学会, 日本化学会 |
プロジェクト | 北海道大学物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラム(ALP) 理工系大学院教育改革プロジェクトPh.Discover |
居室 | 理学部7号館 7-105号室 |