研究者情報

阿部 一啓

教授

ABE Kazuhiro

生命を担う生体分子のはたらきを化学的に理解し、操り、創り出す

化学部門 有機・生命化学分野

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研究テーマ

能動輸送体をはじめとした膜輸送体の作動機構解明

研究分野生化学, 構造生物学, 分子生物学
キーワードX線結晶構造解析, クライオ電子顕微鏡, 能動輸送体, 膜タンパク質, P-type ATPases, 胃プロトンポンプ, 脂質フリッパーゼ, ナトリウムポンプ, 脂質輸送体, AI, ドラッグデザイン

研究紹介

熱的平衡が死を意味するのであれば、生きた細胞で作り出される、脂質膜を隔てた様々な物質の非対称分布は、生命にとって重要な根幹の一つです。これを作り出しているのが、P-type ATPaseをはじめとした数々の能動輸送体です。P-type ATPaseは、細胞内の共通エネルギー通貨であるATPをエネルギー源として、カチオンのように小さなものからリン脂質のように大きなものまで、様々な基質を、それらの濃度勾配に逆らって輸送する能力を持ちます。我々は、主に生化学や構造生物学を駆使して、これら生命の根幹を担う重要な分子がどのようにしてはたらくのかを「化学」のレベルで明らかにしていきます。

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胃酸分泌を担う胃プロトンポンプは我々の胃袋をpH1もの強酸性にしています
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脂質二重膜でリン脂質を輸送(フリップ)する脂質フリッパーゼは細胞の自殺「アポトーシス」に関わります
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人工知能 x 有機化学 x 構造解析 でクスリを創る

代表的な研究業績

Structure and function of H+/K+ pump mutants reveal Na+/K+ pump mechanism.Young, V.C., Nakanishi, H., Meyer, D.J., Nishizawa, T., Artigas, P & Abe, K. Nat. Commun., 13, 5270 (2022)
Gastric proton pump with two occluded K+ engineered with sodium pump-mimetic mutations. Abe, K., Yamamoto, K., Irie, K., Nishizawa, T. & Oshima, A. Nat. Commun., 12, 5709 (2021)
Transport cycle of plasma membrane flippase ATP11C by cryo-EM. Nakanishi, H., Nishizawa, T., Irie, K., Segawa, K., Nureki, O., Fujiyoshi, Y., Nagata, S. & *Abe, K. Cell Rep., 32, 108208 (2020)
A single K+-binding in the crystal structure of the gastric proton pump. Yamamoto, K., Dubey, V., Irie, K., Nakanishi, H., Khandelia, H., Fujiyoshi, Y. & Abe, K. eLife, 8, e47701 (2019)
Crystal structures of the gastric proton pump.Abe, K., Irie, K., Nakanishi, H., Suzuki, H. & Fujiyoshi, Y. Nature, 556, 214-218 (2018)

関連産業分野

化学, 創薬, 医薬品
学位博士(理学)
自己紹介

札幌出身です。X線結晶学やクライオ電子顕微鏡による単粒子解析を駆使して、胃プロトンポンプを始めとした能動輸送体のはたらきを研究しています。趣味は地ビール屋巡りです。

学歴・職歴1999年 北海道大学理学部化学科 卒業
2001年 北海道大学大学院理学研究科化学専攻 修士(博士前期)課程 修了
2004年 北海道大学大学院理学研究科化学専攻 博士後期課程 修了
2003年 日本学術振興会特別研究員(DC2)
2004年 日本学術振興会特別研究員(PD)(京都大学大学院理学研究科)
2008年 社団法人バイオ産業情報化コンソーシアム特別研究員(京都大学大学院理学研究科)
2011年 京都大学特定研究員
2012年 名古屋大学細胞生理学研究センター 助教(兼務 大学院創薬科学研究科)
2016年 名古屋大学細胞生理学研究センター 准教授(兼務 大学院創薬科学研究科)
2024年- 現職
所属学会日本生化学会, 生物物理学会, 日本薬学会
プロジェクトJST CREST 細胞内ダイナミクス 「高次構造体連関が制御する脂質スクランブルシステム」
居室理学部7号館 7-208号室

化学部門 有機・生命化学分野

阿部 一啓

教授

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いま没頭している研究テーマは何ですか?

細胞の表面に発現している膜タンパク質、とくに能動輸送体の研究です。
電子顕微鏡をつかってそのカタチ(構造)を調べることで、このタンパク質がどのような仕組みで働くかを調べています。カタチが分かると、そこにハマる化合物をデザインできて、それは薬になる可能性を秘めています。デザインに人工知能を取り入れて、薬を作ることにも挑戦しています。

能動輸送体の分子生命化学 詳しくはHP参照
https://wwwchem.sci.hokudai.ac.jp/~molbio/
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研究者になったきっかけは何ですか?

北大での学生時代に、今も研究対象としている胃プロトンポンプに出会ったことです。私たちの胃袋では、食べ物を消化するときに胃酸が分泌されて、pH 1くらいの強~い酸性になります。この胃酸を分泌するのが胃プロトンポンプです。私たちの体の中には他にもたくさんのプロトンポンプがありますが、胃以外にpH 1の臓器はありません。つまり、この胃プロトンポンプは「最強」のカチオンポンプなのです。このタンパク質が「最強」である理由が知りたくて、研究者として生きていくことを決意しました。

最強のカチオン輸送タンパク質・胃プロトンポンプ
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研究室の自慢を教えてください。(スタッフ、学生、論文数、実験装置のことなど)

まだ発足したばかりの研究室で、スタッフは私ひとり、ポスドクと博士課程の学生が1人ずつ、4年生が4人の小さな研究室です。過半数が外国人なので、ラボの公用語は英語ですが、小さい研究室だからこそお互いの距離が近く、きめ細かい研究ができていると自負しています。

あと、最近コーヒーメーカーを導入しました。100円払えば誰でも淹れたてのコーヒーを飲めます。私たちの研究に興味のある人は、是非100円玉を握りしめて研究室に遊びに来てください:)

コーヒーマシンとラボメンバー
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得意なこと、⼤好きなこと、趣味、⽇課を教えてください。

「趣味は研究」というのは、ありきたりな回答かもしれません。でも胃プロトンポンプの研究に関して言えば、この惑星で私が一番得意だと自負しています;)研究を通して、世界中の研究者との交流が生まれます。学会や共同研究で彼らを訪ねていくこともあります。業務が終わった後に、訪れた土地のmicrobrewery(地ビール屋さん)を探して、彼らとビールを酌み交わすのが、研究以外の趣味といえば趣味です。

世界中の仲間と、業務終了後の地ビール
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所属・担当

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