研究ニュース

湧き水のみに生息するカイミジンコ新種を発見人間生活を支える湧き水の、生物多様性における重要性を再確認

【ポイント】

  • 山梨県北杜ほくと市にあるとり水から採集されたカイミジンコの1種を新種として報告。
  • 国内の様々な水環境での調査により、山梨県以東の湧き水のみに棲む種であることを明らかに。
  • DNA配列情報を用いた解析により、遠く離れた湧き水間の遺伝的交流を確認。

【概要】
北海道大学大学院理学院博士後期課程の宗像みずほ氏、同大学大学院理学研究院の角井敬知講師、葛西臨海水族園の田中隼人氏の研究グループは、山梨県北杜市の「女取湧水」という湧き水から発見したカイミジンコが新種であることを明らかにしました。

湧き水は、生活用水や農業用水の水源として人間生活に関わりの深い場所であると同時に、地下水系の生物と表層水の生物が住まう特殊な環境であることから、地域の生物多様性を考えるうえでも重要な水環境です。湧き水から知られる様々な生物群の一つに、カイミジンコという体長数mm程度の二枚貝の様な殻を体の左右に持った甲殻類(エビやカニの仲間)がいます。しかし湧き水に棲むカイミジンコの研究は欧州や北米を除くと遅れており、日本国内ではほとんど行われていませんでした。

今回、女取湧水から得られたカイミジンコの1種に

ついて詳細な形態観察を行ったところ、既知の属のいずれにも該当しない特徴を有する未知の種であることが明らかになったため、新属新種Lissostrandesiaリッソスランデジア fonticola フォンティコラ(和名:シミズ ヒラ マルワ カイミジンコ)として報告しました。また女取湧水での発見後に実施した国内の様々な水環境における採集調査の結果とDNA配列情報を用いた解析の結果から、本種は山梨県から北海道までという広い分布域を示す、湧き水のみに生息する種であることを明らかにしました。

なお本研究成果は、2024年12月31日(火)公開のZoological Studies誌に掲載されました。

論文名:A new genus and species of the spring-endemic Ostracoda (Cypricercinae, Cyprididae) and its genetic population structure among rheocrenic springs in Japan(湧き水に固有な新属新種のカイミジンコと日本の流水泉間における集団構造)
URL:https://doi.org/10.6620/ZS.2024.63-51

プレスリリースはこちら