研究ニュース

柔らかい強誘電分子結晶の機能チューニング成功オーダーメード機能材料開発に期待

【ポイント】

  • 異なる分子を均一に混ぜ合わせた、柔らかい強誘電分子結晶の固溶体合成方法を開発。
  • 強誘電性分極の温度特性をチューニングし、材料の焦電性能の大幅向上に成功。
  • 用途に合わせた機能チューニングを可能とし、将来の実用化に向けて大きく前進。

【概要】
北海道大学大学院理学研究院の原田潤准教授らの研究グループは、柔らかい強誘電分子結晶の機能チューニングに成功しました。

高温で柔らかい結晶相となり、室温で強誘電性を示す機能材料「柔粘性/強誘電性結晶」は、研究グループが2016年7月に世界で最初に発表した機能性物質で、押すとワックスのように延びて広がる強誘電体です。粉末を押し固めるだけで、透明な強誘電性フィルムやディスクを簡単に作製できるという、従来の材料にはない特性を持つため、現在広く用いられているセラミクス強誘電体などとは異なる用途での応用も期待されています。しかし、実用化に向けた材料開発において重要なカギとなる、特定の用途に合わせて機能をチューニングする方法が確立されていませんでした。

今回、研究グループは、2種類の柔粘性/強誘電性結晶の溶液から、急速に沈殿を生成することにより、異なる構成分子を任意の割合で均一に混ぜ合わせた結晶(固溶体)を合成し、強誘電体として利用できる温度範囲や、分極特性などのチューニングに成功しました。それにより、例えば、赤外線センサー感度として重要な電圧応答焦電性能指数も大幅に向上し、現在広く使われているセラミクス強誘電体の10倍以上の値が得られています。

今回開発した手法は他の柔粘性/強誘電性結晶にも適用可能で、用途に合わせたオーダーメードの材料開発により、将来の実用化に向けて、大きく前進したといえます。

なお、本研究成果は、2024年7月18日(木)公開のJournal of the American Chemical Society誌に掲載されました。

論文名:Solid Solutions of Plastic/Ferroelectric Crystals: Toward Tailor-Made Functional Materials(柔粘性/強誘電性結晶の固溶体:オーダーメード機能性材料開発に向けて)
URL:https://doi.org/10.1021/jacs.4c07676

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