研究者情報

佐々木 克徳

准教授

SASAKI Yoshi Nori

気候系における海洋の役割の解明

地球惑星科学部門 地球惑星ダイナミクス分野

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研究テーマ

海洋循環の長期変動の理論的,数値的,統計的手法による解明
海洋の変動に伴う気候変動・地球環境変動の理解

研究分野海洋物理学, 気象学, 気候学
キーワード海洋循環, 西岸境界流, 大気海洋相互作用, 海面上昇, 気候変動, 地球温暖化, 海洋貧酸素化

研究紹介

海洋変動とそれに伴う気候・環境変動について,理論や数値シミュレーション,統計解析を用いて,様々な研究を行っています.
海洋変動では特に中緯度の海洋循環変動について着目した研究を行っています.海洋循環の中で,北太平洋の黒潮続流や北大西洋のメキシコ湾流は,世界でも有数の流量を持つ西岸境界流です.これらの海流の位置や強さは経年から十年程度の時間スケールで変動しており,海洋生態系や中緯度の大気に影響を与えます.この西岸境界流の変動のメカニズムを説明するためにjet-trappedロスビー波を提案し,黒潮続流とメキシコ湾流の変動を説明できることを示しました(Sasaki et al. 2013).北太平洋東部上空での大気変動により生じた海面水位変化が,jet-trappedロスビー波として海洋ジェットに捕捉され西方に伝播します(図1).またこれ以外にも,海洋循環に伴う水温変動(図2)や塩分変動(図3)についての研究を行っています.
海洋の変動に伴う気候変動では,特に中緯度域の大気海洋相互作用の研究を行っています.黒潮やメキシコ湾流といった暖流が流れる領域では,海面水温の勾配が大きい領域(海面水温フロント)が形成され,大気に強い影響を与えます.観測データと領域大気モデルによる解析から,東シナ海の黒潮に伴う海面水温フロントは 上空の梅雨前線を強化することを示しました(Sasaki et al. 2012).また,この黒潮に伴う海面水温フロントの年毎の強さの違いが, 梅雨前線の年毎の降水の強さに影響を与えることを明らかにしました(Sasaki and Yamada 2018).黒潮に伴う海面水温フロントが強い(弱い)年には,気象擾乱の強化(弱化)を通じて,東シナ海上から日本南部で降水量が増加(減少)します(図4).
海洋の変動が地球環境に与える影響として,日本周辺の海面水位上昇の研究を行っています.海面水位の変動,特に地球温暖化に伴う海面水位上昇は沿岸の人間生活や環境に大きな影響を与えます.これまでの研究で,近年の北太平洋西部での顕著な海面水位上昇が黒潮続流の北上によることを示し,これに伴い日本南東岸(関東,東海地方)で顕著な沿岸水位変動が生じることを明らかにしました(図5).また,20世紀全体の北太平洋の海面水位変動について領域海洋モデルを用いたシミュレーションを行い, 1950年付近の日本沿岸の高水位が風の変動によることを示しました(Sasaki et al. 2017).このほか領域海洋モデルを用いた将来の北太平洋の海面水位上昇についてのシミュレーションも行っています.

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jet-trappedロスビー波が西方伝播する様子.
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西部北太平洋の海面水温トレンド
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亜表層を伝搬する塩分変動
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黒潮の海面水温フロント変動に伴う降水量変化
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黒潮続流の変動による日本沿岸水位の変化

代表的な研究業績

Sasaki, Y. N., and R. Ito, 2024: Impact of the Kuroshio large meander on local atmospheric circulation and precipitation in winter. Progress in Earth and Planetary Science, 11(15)
Sasaki, Y. N., and Y. Iwai, 2022: Two pathways of subsurface spiciness anomalies in the subtropical South Pacific. Frontiers in Climate, 4
Sasaki, Y. N. and C. Umeda, 2021: Rapid warming of sea surface temperature along the Kuroshio and the China coast in the East China Sea during the 20th century. Journal of Climate, 34, 4803-4815
Woodworth, P. L., A. Melet, M. Marcos, R. D. Ray, G. Woppelmann, Y. N. Sasaki, M. Cirano, A. Hibbert, J. M. Huthnance, S. Monserrat, and M. A. Merrifield, 2019: Forcing Factors Affecting Sea Level Changes at the Coast. Surveys in Geophysics, 40, 1351-1397
Sasaki, Y. N., and Y. Yamada, 2018: Atmospheric response to interannual variability of sea surface temperature front in the East China Sea in early summer. Climate Dynamics, 51(7), 2509-2522
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学位博士(理学)
自己紹介

数年から数十年の時間スケールを持つ気候の変動について、海洋の役割と大気海洋相互作用に注目した研究を,理論,数値シミュレーション,統計解析といった様々なアプローチで行っています。

学歴・職歴2003年 北海道大学理学部 地球物理学科卒業
2005年 北海道大学理学研究科 地球惑星科学専攻前期課程修了
2008年 北海道大学理学研究科 地球惑星科学専攻後期課程修了
2008-2010年 ハワイ大学国際太平洋研究センター ポスドク研究員
2010-2011年 北海道大学大学院 理学研究院 ポスドク研究員
2011-2013年 北海道大学大学院 理学研究院 特任助教
2013-2018年 北海道大学大学院 理学研究院 講師
2018年-現在 北海道大学大学院 理学研究院 准教授
所属学会日本海洋学会, 日本気象学会, American Geophysical Union
居室理学部8号館 8-3-20号室