研究者情報

仲田 崇志

講師

NAKADA Takashi

微細藻類の違いを見極める

生物科学部門 多様性生物学分野

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研究テーマ

微細緑藻類の系統分類体系の確立を目指す

研究分野藻類学, 系統分類学, 進化学, 形態学, 命名法
キーワード緑藻類, オオヒゲマワリ目, Chlamydomonas, 分離培養, 顕微鏡観察, 分子系統解析, 国際藻類・菌類・植物命名規約

研究紹介

人類にとって未知の領域と言えば,宇宙や深海が挙げられがちですが,微小な生物の世界もまた未知の領域です。水中には目に見えない大きさの様々な微生物が無数に存在しますが,その多くが新種であったり,十分に研究されていない種であったりします。

中でも私が注目しているのは緑藻類オオヒゲマワリ目という微細藻類の一群です。オオヒゲマワリ目には様々な形の藻類が含まれ,多くは淡水に住んでいるものの,海や雪の中に住むものもいます。さらに単細胞のものだけでなく,群体を作るものも存在し,この仲間の間で細胞レベルの様々な進化が起こっていたことがわかります。そこで私はオオヒゲマワリ目を「細胞進化の博物館」と勝手に呼んでいます。

しかし,身近な水田やキャンパスの土の中にすら新種や日本新産種,数十年間報告のない種が普通に存在し,その分類についても問題が山積しています。近年,遺伝子の配列から系統関係を推定する分子系統学が発達し,分類体系の刷新が進んでいますが,系統解析からは生物の実態はわかりません。そのため微細藻類の進化を深く理解するためには,対象の藻類の培養,形態観察,生理学的な特徴の解明などが重要になってきます。

私の研究では,形態観察・培養実験・分子系統解析を組み合わせることで,微細藻類の理解に根ざした分類体系を構築し,微細藻類への理解を深めることを目指しています。具体的には以下のようなテーマの研究を進めています。
・ 新たな培養株を確立し,新種の記載や既知種の再記載を進める。
・ 種の境界線を明らかにし,オオヒゲマワリ目における種分化の実態を明らかにする。
・ 生理学的な特徴など,これまで分類に活かされてこなかった性質を調べ,各種への理解を深める。
・ 分子系統を踏まえて形態観察を見直すことにより,形態学的にも系統学的にも妥当な属分類の整理を進める。

この他,藻類の名前(学名・和名や命名法)に関する研究なども行っています。

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Chlamydomonas reinhardtii。単細胞性のオオヒゲマワリ目の代表種。スケールは 5 µm。
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Volvox aureus。群体性のオオヒゲマワリ目の代表。スケールは 300 µm。
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Hapalochloris nozakii。細胞壁を失ったオオヒゲマワリ目の一種。新属新種として記載した。スケールは 10 µm。

代表的な研究業績

Nakada, T., Tsuchida, Y. & Tomita, M. Improved taxon sampling and multigene phylogeny of unicellular chlamydomonads closely related to the colonial volvocalean lineage Tetrabaenaceae-Goniaceae-Volvocaceae (Volvocales, Chlorophyceae). Mol. Phylogenet. Evol. 130, 1–8 (2019).
Nakada, T. & Tomita, M. Morphology and phylogeny of a new wall-less freshwater volvocalean flagellate, Hapalochloris nozakii gen. et sp. nov. (Volvocales, Chlorophyceae). J. Phycol. 53, 108–117 (2017).
Nakada, T., Tomita, M., Wu, J.-T. & Nozaki, H. Taxonomic revision of Chlamydomonas subg. Amphichloris (Volvocales, Chlorophyceae), with resurrection of the genus Dangeardinia and descriptions of Ixipapillifera gen. nov. and Rhysamphichloris gen. nov. J. Phycol. 52, 283–304 (2016).
Nakada, T., Misawa, K. & Nozaki, H. Molecular systematics of Volvocales (Chlorophyceae, Chlorophyta) based on exhaustive 18S rRNA phylogenetic analyses. Mol. Phylogenet. Evol. 48, 281–291 (2008).
Nakada, T., Nozaki, H. & Pröschold, T. Molecular phylogeny, ultrastructure and taxonomic revision of Chlorogonium (Chlorophyta): Emendation of Chlorogonium Ehrenberg and description of Gungnir gen. nov. and Rusalka gen. nov. J. Phycol. 44, 751–760 (2008).
学位博士(理学)
自己紹介

本が好きです。微細藻類に興味がある方は,是非遊びに来てください。

学歴・職歴2003年 東京大学理学部生物学科 卒業
2005年 東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻修士課程修了
2008年 東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻博士課程修了
2008年 日本学術振興会 特別研究員 PD(慶應義塾大学)
2009年 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特別研究助教
2011年 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任助教
2014年 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任講師
2019年 横浜国立大学大学院環境情報研究院 非常勤教員
2019年 横浜国立大学大学院環境情報研究院 科学研究費研究員(-2021年)
2022年- 現職
所属学会日本藻類学会, 日本植物分類学会, 日本植物学会, Phycological Society of America, International Association for Plant Taxonomy
居室理学部5号館 5-609号室

生物科学部門 多様性生物学分野

仲田 崇志

講師

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研究者になったきっかけは何ですか?

子どもの頃は、祖父母に買ってもらった図鑑を読むのが大好きでした。その結果、新種を見つけて命名することが将来の夢になってしまいました。初めは恐竜が好きでしたが、動物(哺乳類)、魚介類、植物、と徐々に小さくなり、中高生の頃はシダ・コケ、学部のころは変形菌の収集に夢中になり、大学院で微細藻類を専門に決めました。来世では原核生物の研究をしているはずです。

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研究に⾏詰まったらどんなことをしますか?

実験がうまくいかないときは、うまくいくまで頑張るしかないわけですが、嫌になったら並行して別の研究を始めます。あとは論文を書き始めるか。昔、研究が嫌になって、現実逃避で原核生物命名規約の解説を書いたことがありました。

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得意なこと、⼤好きなこと、趣味、⽇課を教えてください。

趣味は書籍の収集です。読むかどうかはさておき。数千冊のマンガや小説に加えて、図鑑は大概の生物のものは持っています。シリーズものの本は全部揃えたくなってしまうのが困りものです。

引っ越し荷物をほどいた結果

ここ数年は辞書の収集にも力を入れていて、江戸時代の辞書も集まってきました。いろいろな藻類の名前が、いつ頃からどんな辞書に登場するかを調べたりしています。

自宅図書館(辞書コーナー)とサピオ君