研究者情報

高畑 信也

特任講師

TAKAHATA Shinya

クロマチン構造が制御する遺伝子発現

化学部門 有機・生命化学分野

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研究テーマ

クロマチンの構造決定機構の解明と遺伝子発現メカニズムの理解

研究分野分子生物学, エピジェネティクス, 分子遺伝学, 生化学
キーワード分裂酵母, 出芽酵母, 遺伝子, 染色体, クロマチン, ヌクレオソーム, 転写, ヘテロクロマチン

研究紹介

生命の設計図と呼ばれるゲノム上には酵母で5000、ヒトで26000程の遺伝子がコードされているが常に全ての遺伝子が発現しているわけではなく細胞の置かれた状況によってどの遺伝子が発現するのかが適切に調節を受けています。この遺伝子発現調節には様々な要因が関わるが、最も大きな要因はクロマチンの構造変化です。ゲノム上でクロマチン構造の密な領域は遺伝子発現が抑制され、クロマチン構造の疎な領域は遺伝子発現が誘導されています。このクロマチン構造の疎密を決定するのはヒストンタンパク質の翻訳後化学修飾であることが解明されているが、その化学修飾が引き起こす生体分子反応は未だによく理解されていない所です。研究の目指すところはクロマチン構造制御に関わる生体超分子(タンパク質、RNA、シグナル分子)の決定と、クロマチン構造変換後に起きる遺伝子発現メカニズムの分子レベルでの理解です。

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ヌクレオソームの凝集したヘテロクロマチン。ヒストンH3K9のメチル化とそれを認識するHP1タンパク質がヌクレオソームの高度な凝集の引き金を引くと考えられているが詳細な分子メカニズムは不明である。
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ヌクレオソームが疎な状態のユークロマチン。ヒストンH3K4のメチル化、他のリジン残基のアセチル化が疎なヌクレオソーム構築に関わると考えられているが、詳細な分子メカニズムはよく分かっていない。
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赤い色素で遺伝子発現状態を可視化した分裂酵母株。赤い酵母はヘテロクロマチン化によって遺伝子発現が抑制された状態、白い酵母はユークロマチン化で遺伝子発現が活性化された状態。分裂酵母株Bの示すPEV(Position Effect Variegation)は高等生物が潜在的にもつ多様性の証明だと考えられる。

代表的な研究業績

H3K36 methylation state and associated silencing mechanisms. Suzuki S, Murakami Y, Takahata S., Transcription. 2017, 26-31.
Histone H3K36 trimethylation is essential for multiple silencing mechanisms in fission yeast. Suzuki S, Kato H, Suzuki Y, Chikashige Y, Hiraoka Y, Kimura H, Nagao K, Obuse C, Takahata S, Murakami Y., Nucleic Acids Res. 2016, 44(9):4147-4162.
The E2F functional analogue SBF recruits the Rpd3(L) HDAC, via Whi5 and Stb1, and the FACT chromatin reorganizer, to yeast G1 cyclin promoters. Takahata S, Yu Y, Stillman DJ.,EMBO J. 2009, ;28(21), :3378-3389. (F1000 selected)
yFACT induces global accessibility of nucleosomal DNA without H2A-H2B displacement. Xin H, Takahata S, Blanksma M, McCullough L, Stillman DJ, Formosa T., Mol Cell. 2009, 35(3):365-376.
FACT and Asf1 regulate nucleosome dynamics and coactivator binding at the HO promoter. Takahata S, Yu Y, Stillman DJ., Mol Cell. 2009, 34(4), 405-415.
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関連産業分野

バイオテクノロジー
学位博士(理学)
自己紹介

遺伝子の発現がどのように制御されるかは分かっているようで実は分かっていない、人類にとっての大きな謎です。必要な時に、必要な細胞が、必要なだけ遺伝情報を取り出すシステムを誰よりも理解したいと考えて研究を行っています。

学歴・職歴1993-1997年 神戸大学工学部応用化学科 卒業
1997-1999年 サラヤ株式会社バイオケミカル研究所 研究員
1999-2001年 奈良先端科学技術大学院大学 修士課程修了
2001-2004年 横浜市立大学大学院総合理学研究科 博士後期課程修了
2004-2005年 横浜市立大学大学院総合理学研究科 博士研究員
2005-2009年 米国ユタ大学医学部 博士研究員
2009年- 現職
所属学会日本分子生物学会, 日本エピジェネティクス研究会
居室理学部2号館 2-203号室