まだ誰も見たことのない物性現象を発見し、その本質を理論計算によって解き明かすことが私の夢です。独創的なアイデアから未知の現象が見つかったり、新しい概念が生まれる瞬間に研究の魅力を感じています。こうした発見への探究心が研究を続ける原動力の一つになっています。

物質中の電子が示す特異な電子状態や応答現象を理論的に解き明かす研究に取り組んでいます。電子は、結晶構造や対称性、周囲の原子核や他の電子との相互作用、さらには温度や圧力の変化を敏感に感じ取り、多彩なふるまいを示します。例えば、単体テルルの結晶では、原子が螺旋階段のように右巻き・左巻きの螺旋構造をとります。この結晶に螺旋軸方向の電流を流すと、電子のスピンがその方向へ揃い、磁化が生じるという興味深い現象が現れます。これは、螺旋構造が「鏡に映すと元の構造と重ならない」という鏡映対称性の破れをもつことが起源です。このような結晶の対称性と電子の運動が生み出す特異な応答や、多彩な電荷・磁気秩序が発生する仕組みを、量子統計力学に基づく理論計算で解析しています。さらに、これらの現象をより見通しよく理解するための新しい理論計算手法の開発にも取り組んでいます。

天気の良い日は自転車で通勤していますが、赤信号で立ち止まるのが苦手で、大きく遠回りにならない限り、なるべく足をつかずに進める青信号の道を選ぶようにしています。研究でも同様に、一日考えても解けない問題に当たったときは、思い切って別の研究テーマに目を向けます。自転車の寄り道で知らなかったお店や景色に出会うように、別のテーマを考えているうちに、行き詰まっていた問題の解決の糸口がふと見つかることもあります。

また自転車の話になってしまいますが、趣味はサイクリングです。学生時代は、自転車にテントを積んで友人と1〜2週間の旅に出ることもありましたが、最近は体力的に長旅が難しく、日帰りで楽しむことが多くなりました。北海道には魅力的な景色が多く、走っているだけで気分がリフレッシュされます。