研究テーマ | 複雑な化学構造を有する生物活性天然有機化合物の全合成研究 |
研究分野 | 有機合成化学, 天然物化学, 有機反応化学 |
キーワード | 全合成研究, 逆合成解析, 炭素-炭素結合生成反応, 付加環化反応, 不斉触媒反応, テルペノイド, ポリケチド, 超高圧有機合成, 生合成模倣合成 |
研究紹介
天然から産出される有機化合物は、生物に対して様々な作用を示すものが多く、人類は薬や毒などとして太古の昔から利用してきました。19世紀初頭にドイツの化学者ヴェーラーが尿素を合成して以降、有機化学者は天然由来の化合物を合成することに魅せられ、現在までに数多くの天然有機化合物の合成が達成されています。化学者によって合成された天然有機化合物は、その誘導体も含め、医薬品・農薬、香料・色素や機能性材料など幅広異分野で利用され、人類の福祉向上に大きく貢献してきました。そのような背景のもと、我々は生物活性を有する化合物の合成研究を行っており、これまでに様々な天然有機化合物の全合成を達成しています。図「これまでに合成した天然有機化合物」参照。
これらの化合物を合成するためには、多数の官能基や不斉中心、縮環構造を制御する必要があり、有機化学に関する幅広い知識が必要です。また、その化学構造が複雑になればなるほど、既存の反応では太刀打ち出来ないことが多く、新しい反応や合成手法の開発が必要となります。有機化学分野の基礎的研究を積み重ねることによって、我々の合成研究が行われています。
天然有機化合物の中には、その化学構造の複雑さ故に、多くの有機化学者が挑みながら未だ合成されていない化合物が存在します。そのような分子を研究対象とすることで、合成段階では基礎研究に寄与し、全合成達成後は化合物の量的供給を通じて関連分野へ貢献することを目指しています。
代表的な研究業績
Asymmetric Total Synthesis of (−)-Maldoxin, a Common Biosynthetic Ancestor of the Chloropupukeananin Family, T. Suzuki, S. Watanabe, M. Uyanik, K. Ishihara, S. Kobayashi, K. Tanino, Org. Lett. 2018, 20, 3919-3922.
Enantioselective Total Synthesis of (+)-Iso-A82775C, a Proposed Biosynthetic Precursor of Chloropupukeananin, T. Suzuki, S. Watanabe, S. Kobayashi, K. Tanino, Org. Lett. 2017, 19, 922-925.
Synthesis of Dibarrelane, a Dibicyclo[2.2.2]octane Hydrocarbon, T. Suzuki, H. Okuyama, A. Takano, S. Suzuki, I. Shimizu, S. Kobayashi, J. Org. Chem. 2014, 79, 2803-2808.
Unexpected Diels-Alder/Carbonyl-ene Cascade toward the Biomimetic Synthesis of Chloropupukeananin, T. Suzuki, Y. Miyajima, K. Suzuki, K. Iwakiri, M. Koshimizu, G. Hirai, M. Sodeoka, S. Kobayashi, Org. Lett. 2013, 15, 1748-1751.
A Synthetic Study of Atropurpuran: Construction of a Pentacyclic Framework by an Intramolecular Reverse-Electron-Demand Diels-Alder Reaction, T. Suzuki, A. Sasaki, N. Egashira, S. Kobayashi, Angew. Chem., Int. Ed. 2011, 50, 9177-9179.
関連産業分野
ファインケミストリー, 医薬品, 農薬, 香料
学位 | 博士(理学) |
学歴・職歴 | 2000年 早稲田大学理工学部化学科 卒業 2002年 早稲田大学大学院理工学研究科化学専攻 修士課程修了 2005年 早稲田大学大学院理工学研究科生命理工学専攻 博士課程修了 2003-2005年 早稲田大学理工学部化学科 助手 2005-2006年 早稲田大学理工学術院 客員研究助手 2006-2007年 The Scripps Research Institute, Research Associate 2007-2008年 Institute of Chemical and Engineering Sciences (A*star), Research Fellow 2008-2009年 東京理科大学薬学部 ポストドクトラル研究員 2009-2013年 東京理科大学薬学部生命創薬化学科 助教 2013-2014年 早稲田大学先進理工学部応用化学科 助教 2014年- 現職 |
所属学会 | 日本化学会, 日本薬学会, 有機合成化学協会, アメリカ化学会 |
居室 | 理学部6号館 6-01室 |