研究者情報

坂井 哲

教授

SAKAI Akira

相互作用する多体系の謎に挑戦

数学部門 数学分野

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研究テーマ

レース展開などを用いた相転移・臨界現象の厳密な解析;イジング模型に基づく最適化問題の解の評価

研究分野確率論, 統計力学, 数理物理
キーワード相転移, 臨界現象, 最適化問題, 相互作用多体系, イジング模型やその他のスピン系, ランダムウォークや自己回避歩行, パーコレーション, レース展開

代表的な研究業績

Critical two-point function for long-range models with power-law couplings: The marginal case for d≧dc,
L.-C. Chen, A. Sakai,
Commun. Math. Phys., 372, 543–572 (2019).
Spatial moments for high-dimensional critical contact process, oriented percolation and lattice trees,
A. Sakai, G. Slade,
Electron. J. Probab., 24, no.65, 1–18 (2019).
Application of the Lace Expansion to the φ4 Model,
A. Sakai,
Commun. Math. Phys., 336, 619–648 (2015).
Mean-field Behavior for Long- and Finite Range Ising Model, Percolation and Self-avoiding Walk,
M. Heydenreich, R. van der Hofstad, A. Sakai,
J. Stat. Phys., 132, 1001–1049 (2008).
Lace Expansion for the Ising Model,
A. Sakai,
Commun. Math. Phys., 272, 283–344 (2007).
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学位博士(理学)
所属学会日本数学会
プロジェクトCREST「学習/数理モデルに基づく時空間展開型アーキテクチャの創出と応用」
科研費基盤研究C「様々な数理モデルの高次元臨界現象とクロスオーバーの厳密な解析」
居室理学部3号館 3-513号室

数学部門 数学分野

坂井 哲

教授

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いま没頭している研究テーマは何ですか?

多体系(確率変数列の和や相互作用するスピン変数たちから成る系)の相転移・臨界現象を数学的に厳密に解析することです。それを可能にする数少ない手段の一つとして、レース展開があります。この展開が絶対収束すると、複雑に絡み合っていた多体効果がほどけて臨界現象が簡単になる、という事実があります。臨界現象が簡単になるのは、次元が或る閾値(上部臨界次元)を超えた時だけだと信じられていて、その次元ギリギリまでレース展開を収束させられるのか、臨界次元直上ではどうなってしまうのか、に没頭しています。手前味噌ですが、磁石の統計力学モデルとして有名なイジング模型や、伝染病伝搬を記述する確率過程であるコンタクトプロセスに対するレース展開を証明して、名前が知られるようになりました。

ウェリントン研究集会にて(2019年12月)
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研究者になるまでの思い出を教えてください。

「相転移・臨界現象を数学的に厳密に解析する」ことは元来難しい問題ですが、そのうちでも比較的簡単な問題は既に解かれてしまって、残っているのは非常にチャレンジングなものばかりです。そういう背景や「それは数学の問題なの?」という雰囲気もあって、日本の数学会ではマイナーな分野なのですが、海外では非常に活気があります。私は博士号を取得してすぐに海外に飛び出し、カナダのUBC、オランダのEURANDOMとTU/e、イギリスのBath大学でトータル7年間強キャリアアップしました。最初の頃に持っていた「自分が思うような立派な研究者になれるだろうか?」という不安も、文字通り毎日格闘していく中で薄らいでいき、気づいたら人格も変わっていました。だから、研究者を目指す人に贈りたい言葉があるとすれば、それは「不安は成長の起爆剤になる(から心配し過ぎるな)」ということと、「諦めないで続ければ、何か良いことあるよ」ということです。

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得意なこと、⼤好きなこと、趣味、⽇課を教えてください。

これはどの方も同じでしょうけど、研究自体が得意なことで、大好きで、趣味みたいなもので、しかも日課です。これを職業にできるのだから、恵まれています。もちろん、思考が行き詰って悶々とすることもありますが、解決したときの喜びを想像しながら、辛抱して頑張ります。構想から論文を書き上げるまで、最長7年半かかった論文もありました。だから、「辛抱」する期間がその位長いことも有り得るわけです。それを乗り越えるためにも、もう一つの趣味というか日課みたいなものである「筋トレ」が役立っています。体を動かして健康を維持することは、良い研究をするためにも重要です。

L-Stationのメンバーたちと。