研究テーマ | 細胞内収縮装置を介した細胞形態の変化と維持の分子機構の解明 |
研究分野 | 生物化学, 細胞生物学, 分子生物学 |
キーワード | タンパク質, ミオシンII, アクチン, 細胞運動, 細胞骨格, 細胞遊走, 細胞質分裂 |
研究紹介
ミオシンは骨格筋細胞から収縮を担うタンパク質として発見され、古くから多くの研究がなされてきました。ミオシンはATPを加水分解して得たエネルギーを、アクチンフィラメントを動かす運動に変換することができます。私たちの身体を作っているほとんどの細胞には、非筋細胞ミオシンII (以後、ミオシンII)と呼ばれる骨格筋細胞のミオシンとは異なるミオシンが存在し、細胞遊走や細胞質分裂等の細胞運動において中心的な役割を担っています。ミオシンIIは筋肉のミオシンと同様に単独では働けず、会合してフィラメントを形成して始めて機能することができます。筋肉のミオシンが常にフィラメントを形成しているのに対し、ミオシンIIは細胞内で必要な時に必要な場所で会合してフィラメントを形成します。その場所で膜にアンカーされているアクチンフィラメントを動かすことにより、細胞の形態を変えることができます。図「細胞内収縮装置の形成領域」参照。細胞運動は細胞の局所的な形態変化であると捉えることもできます。また、変化した細胞の形態を維持し続けることも、それぞれの細胞が正常に働くために必要なミオシンIIとアクチンの重要な機能であると考えられます。脊椎動物の細胞には、3種類のミオシンIIアイソフォームが存在しますが、それらの機能の違いは良くわかっていません。図「遊走中の正常線維芽細胞におけるミオシンIIAとミオシンIIBの局在」参照。私達のグループはそれらの生理機能を明らかにすることから、複雑な細胞形態の変化と維持の分子機構を理解できればと考えて、研究に励んでおります。近年技術的進歩の著しい細胞生物学的な手法を取り入れながら、"細胞を試験管に見立てたタンパク質化学"と呼べるような研究を目指しています。
代表的な研究業績
Y. Sato, K. Kamijo, M. Tsutsumi, Y. Murakami and M. Takahashi,
J. Biochem. 2020, 167, 25-39.
K. Yamamoto, K. Otomo,T. Nemoto, S. Ishihara, H. Haga, A. Nagasaki, Y. Murakami and M. Takahashi,
Exp. Cell Res. 2019, 376, 67-76.
M. Kuragano, T. Q. P. Uyeda, K. Kamijo, Y. Murakami and M. Takahashi,
Mol. Biol. Cell, 2018, 29, 911-922.
M. Kuragano, Y. Murakami and M. Takahashi,
Biochem. Biophys. Res. Commun., 2018, 498, 25-31.
T. Kiboku, T. Katoh, A. Nakamura, A. Kitamura, M. Kinjo, Y. Murakami and M. Takahashi,
Genes Cells, 2013, 18, 90-109.
学位 | 理学博士 |
学歴・職歴 | 1983年 北海道大学理学部化学第二学科 卒業 1985年 北海道大学大学院理学研究科化学第二専攻修士課程修了 1988年 同専攻博士課程 単位取得退学 1989年 理学博士 北海道大学 1988-1989年 花王株式会社 1989-1992年 米国国立衛生研究所(NIH)、国立心臓・肺・血液研究所 (NHLBI) 博士研究員 1992-1993年 北海道大学理学部高分子学科 助手 1993-2001年 北海道大学大学院理学研究科生物科学専攻 助手 2001-2007年 北海道大学大学院理学研究科化学専攻 助教授 2007年-2020年 北海道大学大学院理学研究院化学部門 准教授 2020年-現職 北海道大学大学院理学研究院化学部門 特任教授 |
所属学会 | 日本生化学会, 日本細胞生物学会, 日本分子生物学会, 日本化学会, アメリカ細胞生物学会 |
居室 | 理学部2号館 2-202号室 |