研究者情報

勝俣 啓

准教授

KATSUMATA Kei

巨大地震の未知なる前兆現象を追う

地震火山研究観測センター 地震観測研究分野

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研究テーマ巨大地震を予知することはほぼ不可能というのが地震学者の共通認識である.しかし,それは本当であろうか?巨大地震に先行する地震活動の時間変化に着目して研究している.
研究分野地震学, 個体地球物理学
キーワード地震活動, 地震活動の静穏化, 巨大地震, 前兆現象

研究紹介

西暦2035年9月2日午前10時10分、茨城県水戸市で皆既日食が起きると「予知」されています。日食や月食などの天文学的現象は、いつ・どこで・どのくらいの規模で起きるのか、ほとんど狂いなく極めて正確に「予知」することが可能です。一方、地震はどうでしょうか?大地震がいつ・どこで・どのくらいの規模で起きるのか、ほとんどの場合「予知」することは不可能です。この違いは一体全体どこにあるのでしょうか?
違いは、日食や地震の奥に潜む「自然のからくり」を私たちがきちんと理解しているかいないかにあります。日食は太陽と地球の間を月が通過する際に、月が太陽を覆い隠す現象であることが分かっています。そして、月や太陽や地球の動きは、17世紀にイギリスで活躍した物理学者アイザック・ニュートン卿が確立した方程式によって、極めて正確に計算することができます。ところが、地震の場合はこれほど単純ではありません。地震は地下の岩盤が大きな圧力を受けて破壊する現象であるという大枠は分かっています。しかし、どの場所にどのくらいの圧力が実際に働いているのか正確に測定するのが大変難しいのです。この地下の圧力変化を時々刻々とらえることができれば、地震予知は大きく前進し、防災対策にも役立つのですが、今のところ不可能な状況です。
しかし、不可能だからと言って手をこまねいているわけにはいきません。病気を治療するためには各臓器がどんな役割を果たしているのかという体内の基本構造を詳しく知る必要があるのと同様、地震学でも地球内部の構造をできるだけ詳しく知ることが予知につながるはずです。特定の遺伝子やたんぱく質が病気と関係しているように、地下水やマグマの動きが地震と密接に関係しています。「急がば回れ」と言いますが、何がどのように関連して地震を引き起こすのか、病気の研究と同様、地震学者は現在、このような基礎的な「からくり」を明らかにするため全力を挙げて取り組んでいます。時間はかかりますが、それが地震予知への一番の近道かも知れません。

代表的な研究業績

Katsumata, K. Long-term seismic quiescences and great earthquakes in and around the Japan subduction zone between 1975 and 2012, Pure and Applied Geophysics, 2016, 174: 2427.
Katsumata, K., M. Kosuga, H. Katao, T. Yamada, A. Kato and the Research Group for the Joint Seismic Observations at the Nobi Area, Focal mechanisms and stress field in the Nobi fault area, central Japan, Earth, Planets and Space, 2015, 67:99.
Katsumata, K., A Long-Term Seismic Quiescence before the 2004 Sumatra (Mw 9.1) Earthquake, BULLETIN OF THE SEISMOLOGICAL SOCIETY OF AMERICA, 105, 167-176, FEB 2015.
Katsumata, K. and S. Sakai, Seismic quiescence and activation anomalies from 2005 to 2008 beneath the Kanto district, central Honshu, Japan, Earth Planets and Space, 65(No. 12), 1463-1475, 2013.
学位博士(理学)
学歴・職歴1990年 東京大学大学院理学系研究科修士課程卒業,理学修士の学位取得
1993年 東京大学大学院理学系研究科博士課程卒業,博士(理学)の学位取得
1994年 北海道大学 助手
2007年 東京大学地震研究所 准教授
2009年から現職
所属学会日本地震学会, 日本地球惑星科学連合(JpGU), 米国地球物理学連合(AGU)
居室理学部4号館