研究者情報

青山 裕

教授

AOYAMA Hiroshi

火山活動や噴火現象の物理的カラクリを探る

地震火山研究観測センター 火山活動研究分野

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研究テーマ

地震・地殻変動等の観測データに基づく火山活動の力学過程の研究

研究分野火山物理学, 地震学
キーワード活火山, 火山噴火, 噴火予知, 火山観測, 火山性地震, 地殻変動, 火山防災

研究紹介

皆さんは「火山」という言葉で何を連想するでしょうか? 国内の多くの火山が国立・国定公園に指定されていることが示すように,火山は美しい風景や温泉といった素晴らしい恩恵を与えてくれています(図「望岳台より望む十勝岳」参照).古来より日本人の生活に密接に関係し,信仰の対象とされてきた火山も多くあります.一方で,噴火や災害といった負の側面を思い浮かべる人もいるでしょう.火山噴火で痛ましい災害が繰り返されてきたことも事実です.
ほとんどの火山は常に噴火しているわけではなく,活動したり休んだりを繰り返します.火山と上手に付き合うには,安全なときに火山の恩恵を享受し,危険なときに火山を正しく恐れることが重要です.我々は,災害の要因となる噴火の仕組みの理解や,火山活動の予測技術の向上といった研究を通じて,社会への貢献を目指しています.
2014年の御嶽山噴火や2018年の本白根山噴火では,噴火災害の恐ろしさと同時に水蒸気噴火の予測の難しさが広く認知されました.北海道内でも2006年や2008年に雌阿寒岳で水蒸気噴火が発生しています.我々はそれらの噴火に先行する地震群の中に,傾斜変動を伴う火山性微動が隠れていることを発見しました(図「地震計で観測された雌阿寒岳の傾斜変動」参照).これは噴火に向けた山体内での物質移動を示唆する重要な手がかりです.水蒸気噴火にもいろいろなタイプがあり,我々の成果を他の火山にそのまま応用できるとは限りませんが,水蒸気噴火の予測技術の向上につながる一歩となりました.またこの発見と同時に,地震計でも地面の傾き(傾斜変動)が観測できることを示しました(図「地震計による傾斜変動観測の模式図」参照).今では,国内外の研究者や気象庁も,この成果をデータ解釈や火山監視に活用してくれています.
十勝岳では,噴火口の近傍に設けた新しい地震・傾斜観測点のデータから,非噴火時にも山体が頻繁に傾動していることが分かってきました.この傾動現象が地下のどのような火山活動と関係しているのか,大変興味深いところです.
2000年の有珠山噴火以降,北海道内ではマグマの噴出を伴う噴火が発生していません.しかし,それ以前は1962年や1988年に十勝岳,1977年には有珠山で本格的な噴火が起きています.遠くない将来に,道内でも再び本格的なマグマ噴火は起こるでしょう.このようなマグマ噴火の理解を深めるために,インドネシアやイタリアの火山に出かけて,噴火や地震の発生メカニズムを調べる観測研究も行っています(図「ロコン火山の噴火イメージ」参照,図「ストロンボリ火山の噴火」参照).

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望岳台より望む十勝岳
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地震計で観測された雌阿寒岳の傾斜変動
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地震計による傾斜変動観測の模式図
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ロコン火山の噴火イメージ
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ストロンボリ火山の噴火

代表的な研究業績

Gas flux cyclic regime at an open vent magmatic column inferred from seismic and acoustic records, G. Kondo, H. Aoyama, T. Nishimura, M. Ripepe, G. Lacanna, R. Genco, R. Kawaguchi, T. Yamada, T. Miwa, and E. Fujita, Sci. Rep., 9, 5678, 2019.
Initial phases of explosion earthquakes accompanying Vulcanian eruptions at Lokon-Empung volcano, Indonesia, T. Yamada, H. Aoyama, T. Nishimura, H. Yakiwara, H. Nakamichi, J. Oikawa, M. Iguchi, M. Hendrasto, and Y. Suparman, J. Volcanol. Geotherm. Res., 327, 310-321, 2016.
Precursory tilt changes of small phreatic eruptions of Meakan-dake volcano, Hokkaido, Japan, in November 2008, H. Aoyama, and H. Oshima, Earth, Planets and Space, 67, 119, 2015.
Tilt change recorded by broadband seismometer prior to small phreatic explosion of Meakan‐dake volcano, Hokkaido, Japan, H. Aoyama, and H. Oshima, Geophys. Res. Lett., 35, L06307, 2008.
CMG40T地震計の傾斜応答に関する簡易試験,青山 裕,火山53,35-46, 2008.
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関連産業分野

社会基盤, 減災科学, 砂防
学位博士(理学)
自己紹介

都立高校出身で,高校時代はワンダーフォーゲル部に所属していました.きれいな景色を見ながら山を歩き,温泉で疲れを癒やすのは最高ですね.

学歴・職歴1996年 北海道大学理学部地球物理学科 卒業
1998年 東京大学大学院理学系研究科地球惑星物理学専攻 修士課程修了
2001年 東京大学大学院理学系研究科地球惑星物理学専攻 博士後期課程修了
2001年-2007年 北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター 助手
2007年-2017年 北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター 助教
2011年-2017年 室蘭工業大学大学院工学研究科 講師(非常勤)
2017年- 現職
所属学会日本火山学会, 日本地震学会, 日本地球惑星科学連合, アメリカ地球物理学会
プロジェクト文部科学省「次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト」
文部科学省「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」
居室理学部4号館 4-302号室

地震火山研究観測センター 火山活動研究分野

青山 裕

教授

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研究を通して叶えたい夢は何ですか?

「火山噴火予測の実用化」と言いたいところですが、目的達成の難しさを考えると、今はまだ道半ばです。この「夢」の達成のためには、我々と共に地道に研究を続けてくれる多くの若い力が必要です。火山現象の美しさや複雑さ、研究の楽しさを多くの学生に伝え、新たな研究の推進力となる次世代の火山研究者を育成することも大事ですね。

ストロンボリ島の山頂で見た美しいストロンボリ式噴火
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研究者になったきっかけは何ですか?

漠然とした研究者への憧れしかなかった時に、学部時代を過ごした北海道大学、大学院時代を過ごした東京大学地震研究所で、研究の世界に興味を持たせてくださった先生方や、志を同じくするたくさんの同級生・先輩・後輩に恵まれました。個人の意思という面ももちろんありますが、研究者という道を選ぶ上では、周囲の人々との関係が大きかったと思います。その頃に出会った方々には、今も変わらずお世話になっています。

大学院時代の研究対象だった浅間山
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研究室の自慢を教えてください。

火山の観測研究に取り組む研究室は日本国内でも限られています。我々の研究室はそのうちの一つで、北海道大学の地の利を活かし、北海道内の活動的な火山を中心に観測研究に取り組んでいます。科学技術が発達した現代においても火山観測には労力がかかることから、観測作業は研究室の教職員や学生が助け合って行います。同じ目的に向かって共に汗を流すことでメンバーに強い絆が生まれ、研究室での活発な議論につながっていると感じています。

十勝岳の観測現場へ向かう研究室のメンバー