研究者情報

篠崎 彩子

助教

SHINOZAKI Ayako

高温高圧実験から探る地球、惑星内部の軽元素

地球惑星科学部門 地球惑星システム科学分野

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研究テーマ

高温高圧実験を用いた沈み込み帯における炭素、窒素化合物の挙動の解明。氷天体内部における有機物の化学進化。リンと生命の起源。

研究分野高圧科学, 鉱物学, 地球化学
キーワード地球/氷天体内部, 沈み込み帯, 深部炭素循環, C-O-H-N流体, 芳香族化合物、脂肪族炭化水素, リンの化学進化, 高温高圧実験, ダイヤモンドアンビルセル

研究紹介

水素、炭素、窒素といった軽元素は地球の表層の大気から最深部の核に至るまでの多様な領域に存在し、地球の進化や環境の変動に密接に関連しています。また、生物にとっても必要不可欠な必須元素でもあります。これらの軽元素が地球上のどこに、どの程度、どのような形で存在しているかを明らかにすること、また、各リザーバー間での循環を明らかにすることは地球、生命の進化を解明する上で重要な研究課題となっています。
 私は特に沈み込み帯と呼ばれる領域に注目し、水素、炭素、窒素の挙動についての研究を進めています。沈み込み帯はプレートが地球内部へと沈み込む領域であり、それに伴い、地球表層の物質が深部へと供給される唯一の場です。しかし、地下深くにある物質を手にできる機会は限られており、地球表層から深部への水素、炭素、窒素の供給メカニズムは未解明の点が多く残されています。そこで、私は沈み込み帯の温度圧力条件を模擬した高温高圧実験によって、軽元素の挙動の解明を目指しています。ダイヤモンドアンビルセルやピストンシリンダーを用いた高温高圧実験と、放射光X線回折測定、ラマンスペクトル、赤外吸収スペクトル測定による高温高圧下その場実験や、GC/MS、有機元素分析等による回収試料の精密評価を組み合わせた分析を進めています。現在は、地球表層における軽元素のリザーバーのひとつである有機堆積物に着目し、その主要構成相である芳香族化合物の高温高圧下での化学反応メカニズムの評価を進めています。また、氷天体内部などの極限環境での化学進化の可能性を明らかにするため、アミノ酸をはじめとする生物関連物質の高圧下での安定性と重合反応を調べています。

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ダイヤモンドアンビルセル

代表的な研究業績

Effect of Pressure on the Thermal Cracking and Polymerization of Pentacosane (n-C25), an n-Alkane, 
A. Shinozaki, ACS Earth and Space Chemistry2023, 7, 69-76
Polymerization mechanism of nitrogen-containing heteroaromatic compound under high-pressure and high-temperature conditions,
A. Shinozaki, K. Mimura, and T. Nishida, G.D. Cody, Journal of Physical Chemistry A, 2021, 125, 376-386
Behavior of intermolecular interactions in α-glycine under high pressure,
A. Shinozaki, K. Komatsu, H. Kagi, C. Fujimoto, S. Machida, A. Sano-Furukawa, and T. Hattori, Journal of Chemical Physics, 2018, 148, 044507
Stability and partial oligomerization of naphthalene under high pressure at room temperature,
A. Shinozaki, K. Mimura, T. Nishida, T. Inoue, S. Nakano, H. Kagi, Chemical Physics Letters, 2016, 662, 263-267
Preferential dissolution of SiO2 from enstatite to H2 fluid under high pressure and temperature,
A. Shinozaki, H. Kagi, H. Hirai, H. Ohfuji, T. Okada, S. Nakano, T. Yagi, Physics and Chemistry of Minerals, 2016, 43, 277-285,
学位博士(理学)
自己紹介

茨城出身です。これまで高温高圧条件での有機物の化学反応の解明に携わってきました。趣味は旅行です。

学歴・職歴2007年 筑波大学第一学群自然学類 卒業
2009年 筑波大学生命環境学研究科 博士課程前期修了
2012年  愛媛大学大学院理工学研究科 博士後期課程 修了
2012-2015年 東京大学 理学系研究科 特任研究員
2015-2016年 名古屋大学 環境学研究科地球環境科学専攻 特別研究員
2016年- 現職
所属学会高圧力学会、地球化学会, 鉱物科学会、日本地球惑星科学連合, AGU
居室理学部6号館 8-06号室

地球惑星科学部門 地球惑星システム科学分野

篠崎 彩子

助教

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いま没頭している研究テーマは何ですか?

最近はリンと生命に関する研究を始めました。若手研究者の交流会をきっかけに天文学、惑星科学、化学、生物学など様々な分野の研究者と一緒に”太陽系における元素存在度が低いリンを、地球生命はなぜ、どのように用いるようになったのか”を明らかにすることを目標に共同研究を行い、定期的な勉強会、研究会を企画しています。

私自身は初期地球において無機鉱物に含まれているリンが、どのように生命の原材料物質となる有機リン化合物へと化学進化していったのか、そのプロセスの解明を目指して、室内実験を行っています。さらに、リンを用いる生命が地球以外にも存在するかを検証するために、生命の存在可能性が議論されている氷天体の内部海でのリンの前生物的化学進化を調べています。

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研究に⾏詰まったらどんなことをしますか?

とりあえず、無心になる作業をします。例えば、私が行っている高温高圧実験では、実験に用いる金属ガスケットやカプセルなどのパーツの一部を自分で作る必要があるので、実験の下準備もかねて作業を進めます。すると、ちょうどよい気分転換になって良いアイディアを思いつくことがあります。他にも、いったん課題を忘れて、気分転換に自然豊かな北大のキャンパス内を散歩したりしています。

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研究室の自慢を教えてください。

 私たちの研究室で高温高圧実験に用いているダイヤモンドアンビルセル(通称DAC)は、手のひらに載せることのできる小さな装置で、人の手でねじを回して圧力をかける装置でありながら、地球の内部に相当する数百万気圧もの高い圧力を発生させることが可能です。加圧に用いるダイヤモンドを通して高圧下での結晶の成長などを直接観察することができます。例えば、写真はDACを使って水を室温で1万気圧以上まで加圧して作った高圧氷(氷VI)の単結晶です。さらに可視光やX線などを利用して、高圧下での結晶の構造や物質を構成する分子の状態をその場で観察をすることができます。