自然免疫を担うインターフェロン経路に「記憶」を発見 ~同経路における記憶の制御メカニズムを初めて解明~
- 細胞がインターフェロン刺激を”記憶”し,2 回目の刺激時に素早く応答することを発見。
- この記憶には,ヒストンバリアントH3.3 と呼ばれるタンパク質が重要であることを解明。
- 本発見により,自然免疫記憶の制御メカニズム解明が期待できる。
北海道大学大学院理学研究院の鎌田 瑠泉 助教・坂口 和靖 教授ら,米国国立衛生研究所(NIH)の尾里 啓子 博士ら,京都大学,横浜市立大学の研究者からなる国際研究グループは,自然免疫で中心的な役割を担うインターフェロン経路における”記憶”(インターフェロンメモリー)を発見し,その制御メカニズムを解明しました。
インターフェロンは自然免疫で中心的な役割を担うタンパク質性因子で,細胞がウイルスに抵抗する能力(抗ウイルス活性)を誘導しています。今回の研究では,哺乳類の細胞においてインターフェロン刺激により転写の記憶が形成され,二回目の刺激に対して遺伝子発現が素早く,かつ強力に誘導されることを見出されました。また,今回発見された転写記憶では,記憶される遺伝子上に,転写を担うRNA ポリメラーゼIIや転写因子が素早く結合することを見出しました。
さらに,このインターフェロンメモリーは,遺伝子(DNA)を核内へ収納する機能を持つタンパク質ヒストンの一種であるヒストンバリアントH3.3 とヒストンタンパク質H3 の36 番目のリシン残基(H3K36)の翻訳後修飾により制御されていることを初めて明らかにしました。
今回の研究成果により,獲得免疫とは異なる自然免疫記憶を今回発見されたインターフェロンメモリーが担っていることが明らかとなり,以前よりその存在が示唆されていた自然免疫記憶の制御メカニズム解明につながることが期待できます。
本研究成果は,米国東部時間2018年9月10日(月)公開のPNAS誌(米国科学アカデミー紀要)に掲載されました。
詳細はプレスリリースをご覧ください