多様性生物学講座III 高木研究室の学生が2021年度の日本鳥学会中村司奨励賞を受賞

2021年9月30日

自然史科学専攻・多様性生物学講座III 高木昌興教授の研究室より受賞のニュースが4件届いております。まずは1件目です。

昨年度、髙木研究室において博士学位を取得した澤田明さん(国立環境研究所・学振PD)が、2021年度 日本鳥学会中村司奨励賞を受賞しました。中村司奨励賞は、昨年公表された論文について、研究内容のオリジナリティ、鳥類学における重要性、将来性などが評価された結果授与されるものです。髙木研究室では、本賞の2年連続の受賞となります。

推薦根拠論文:Sawada A, Ando H, Takagi M. 2020. Evaluating the existence and benefit of major histocompatibility complex-based mate choice in an isolated owl population. Journal of Evolutionary Biology 33:762–772.(https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/jeb.13629

受賞理由は以下の通りです。

澤田明氏の論文は、高い標識率を誇る長期研究個体群である南大東島のリュウキュウコノハズク個体群を対象に、性淘汰におけるMHCの役割を世代間の利益を含めて検討し、MHCに基づく選択が生じ近親交配を避けて交配していることを明らかにしている。本研究では、野外の個体群を対象にMHC遺伝子に対する雌による選り好みが存在していることを示し、生涯繁殖成功にもとづいて実証している。長期間の観察データと網羅的なDNAサンプルに基づき、野生個体群を対象に実証的な結果を示しているという点でオリジナリティが高いと評価できる。得られた成果は、配偶者選択の問題に進展を与えるもので、進化生態学的、行動生態学的に高い価値があり、鳥類学的にも重要な成果といえる。長期調査に基づくデータの蓄積があっての研究成果なので、これまでに候補者の属する研究グループによる多くの協力があったと考えられるが、本研究をまとめるためには野外調査、分子実験の解釈と取扱い、統計的解析の全てを高い次元で統合する必要があり、澤田氏自身の研究能力の高さがうかがえ,将来性も高く評価された。

澤田さんによる解説とコメントが載っているサイト:http://ornithology-japan.sblo.jp