多様性生物学講座III 高木研究室の学生が2020年度の日本鳥学会中村司奨励賞を受賞

2021年9月30日

自然史科学専攻・多様性生物学講座III 高木昌興教授の研究室からの受賞のニュース、2件目です。

髙木研究室に特別研究学生として在籍していた西田有佑さん(当時大阪市立大学・PD)が、2020年度 日本鳥学会中村司奨励賞を受賞しました。昨年度は大会が開催されなかったため、本年度の授賞式となりました。中村司奨励賞は、昨年公表された論文について、研究内容のオリジナリティ、鳥類学における重要性、将来性などが評価された結果授与されるものです。

推薦根拠論文:Nishida Y & Takagi M (2019) Male bull-headed shrikes use food caches to improve their condition-dependent song performance and pairing success. Animal Behaviour 152: 29–37.(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0003347219301113

 

受賞理由は以下の通りです。

貯食行動は哺乳類と鳥類に共通する行動として、これまでに多くの研究がある。モズのはやにえは古来より知られている現象で、餌不足のときの飢餓状態を回避して生存率を高める貯食行動として理解されることが一般的であったが、それ以外にも、なわばりを主張するマーキング行動、なわばりの餌の豊富さを誇示する行動、獲物を食べている途中で放置しただけの特に意味のない行動など、これまで様々な解釈がなされてきた。西田有佑氏は、野外でのはやにえの量を増減する巧妙な操作実験を行い、1月にはやにえを多く摂取したオスは繁殖期におけるさえずり速度が速くなること及びこのことが繁殖成功の増加をもたらすことを明確に示し、この行動を性選択の文脈から解釈する新しい観点を提示した。この観点はこれまでになかったもので、高いオリジナリティのある研究である。

この研究は、単にモズの行動研究というだけでなく、貯食という広く見られる現象に対して性選択の文脈で解釈する観点を新たに加えることを意味し、鳥学のみならず行動生態学、進化生態学の分野で広く引用されるであろう重要な研究と言える。

西田氏は特殊な機器や観測手法を用いずに、3年にわたる地道な野外調査に基づいて研究を進めている。鳥学の基本的な手法を用いながら成果を積みあげ、それを明快な論文としてまとめている高い研究能力から、今後の発展が大いに期待できる。

以上のような理由から、西田氏の研究は中村司奨励賞が要件とする高い独創性、鳥類学における重要性、研究者としての将来性のいずれについても非常に高い水準で満たすものであるとの評価で合意し、受賞候補者として選定した。