研究者情報

千葉 由佳子

教授

CHIBA Yukako

植物生存戦略とRNA代謝

生物科学部門 形態機能学分野

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研究テーマ

RNAから迫る植物の環境応答機構と生存戦略

研究分野植物分子生物学
キーワード環境ストレス, mRNA分解制御, 翻訳制御, シロイヌナズナ

研究紹介

植物は様々な環境変化の下で生育しており,移動という手段により回避することができない分,それらに迅速かつ巧妙に対処しなければなりません。これには様々な遺伝子の発現調節を伴いますが,これまでの研究のほとんどはmRNA合成の段階である転写制御に注目して行われてきました。しかしながら,実際に機能するタンパク質ができるまでには、多くの転写後調節が関わっています。mRNA分解や翻訳制御などの分子メカニズムを理解することによって,遺伝子発現における植物の持つ巧妙な環境応答機構を明らかにすることを目指しています。私はDNAに刻まれた遺伝情報の発現がどのように制御されて,多彩な生命現象を支えているのかを明らかにしたいと思い研究を始めました。我々の研究室では,分子遺伝学・生理生化学的研究などの多彩な手法が可能な植物を研究対象とし,転写後調節に着目した分子レベルの研究を進めています。目には見えないミクロの世界の研究ですが,植物の環境応答機構の研究は将来的には過酷な環境に耐えうる食物の作成にもつながり得るものであると考えています。

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AtCCR4-NOT複合体は遺伝子発現制御のマスターレギュレーターとして、植物の環境適応機構にどのように関わるか?

代表的な研究業績

Arae T. †, Isai S. †, (†co-first authors)Sakai A., Mineta K., Hirai Y. M., Suzuki Y., Kanaya S., Yamaguchi J., Naito S., *Chiba Y.: Co-ordinated regulations of mRNA synthesis and decay during cold acclimation in Arabidopsis cells. Plant Cell. Physiol. 58:1090-1102 (2017)
Suzuki Y., Arae T., Green P.J., Yamaguchi J., *Chiba Y. AtCCR4a and AtCCR4b are involved in determining the poly(A) length of Granule-bound starch synthase 1 transcript and modulating sucrose and starch metabolism in Arabidopsis thaliana. Plant Cell. Physiol., 56: 863-874, (2015)
*Chiba Y. and Green P.J.: mRNA degradation machinery in plants. J. Plant Biol., 52: 114-124 (2009).
Chiba Y., Sakurai R., Yoshino M., Ominato K., Ishikawa M., Onouchi H., *Naito S.: S-Adenosyl-L-methionine is an effector in the posttranscriptional autoregulation of the cystathionine -synthase gene in Arabidopsis. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 100: 10225-10230 (2003).
Chiba Y., Ishikawa M., Kijima F., Tyson R.H., Kim J., Yamamoto A., Nambara E., Leustek T., Wallsgrove R.M. and *Naito S.: Evidence for autoregulation of cystathionine gamma-synthase mRNA stability in Arabidopsis. Science, 286: 1371-1374 (1999).
学位博士(農学)
学歴・職歴1997-2000年:日本学術振興会,特別研究員(DC1)
2000年:北海道大学大学院農学研究科農芸化学専攻,博士後期課程修了
2000-2003年:日本学術振興会,特別研究員(PD)
2003-2005年:日本学術振興会,海外特別研究員
2005-2006年:Limited Termed Researcher, Delaware Biotechnology Institute, University of Delaware Research Scientist, Crop Genetics Research & Development, DuPont
2006-2008年:特別契約職員 助教,岡山大学資源生物科学研究所
2008-2013年:北海道大学創成科学共同研究機構、特任助教
2012-2015年:さきがけ研究員(兼任)
2013年-:現職
所属学会日本植物生理学会, 日本RNA学会, 日本分子生物学会, 植物細胞分子生物学会
居室理学部5号館 5-702室

生物科学部門 形態機能学分野

千葉 由佳子

教授

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研究を通して叶えたい夢は何ですか?

研究とは未知への挑戦です。私の研究テーマは「植物が様々な環境変化にどのように適応して生きているのかを、分子レベルの調節機構から理解しよう」というものです。既存の知識と新たに得られた実験データから仮説を立てて進めていくのが研究の基本ですが、多くが期待通りには進みません。正直に言って大変です。私が研究の対象とする生物の世界は単純ではありません。しかし、そこから思いもよらないことがわかるときがあり、それが研究の醍醐味かと思います。研究を通して叶えたい夢はふたつあり、生物学に残された何某かの課題に答えることと、未知への挑戦の厳しさと楽しさを学生達に伝えることです。

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研究に行き詰ったらどんなことをしますか?

研究でうまくいかないことは多くあります。そのようなとき、私はある程度の期限を決めて問題に集中して取り組みます。それでも解決策が見えてこないときは、方向転換を考えるようにしています。うまくいかないことに取り組むのは大変な気力が必要ですが、研究には試行錯誤も必要ですし、一生懸命取り組めば解決まで至らなくとも、何かしら学ぶことはあるはずです。ただ、研究はどちらかというと頭を多く使うので、日常生活では気分転換として体を動かすようにしています。今は、ヨガにはまっています。

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留学のすすめ

私は博士号取得後に5年ほどアメリカの研究室にポスドクとして留学しました。想像以上に大変なことをもありましたが、今の私の生き方や研究姿勢にも大きな影響を与えた期間だったと思います。よい指導者や仲間に恵まれ、その付き合いは今でも続いています。最近は留学を希望する日本人学生が減少していると言われており、とても残念なことと思います。研究者を目指す方はもちろんですが、そうでない方も日本を飛び出す勇気を持っていただきたいです。ただし、重要なことは自分がそこで何を成し遂げたいかハッキリとした目的を持つことです。志さえしっかりしていれば、得るものは計り知れないと思います。

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所属・担当