研究ニュース

水星の半径が形成以降 10km 以上縮んできたことを解明惑星の熱進化を明らかにするための新たな解析手法を創出

【ポイント】

  • 表面の凸凹度合いに基づき、地質イベント等による水星の収縮地形の分布への影響を調査。
  • 水星が形成から現在までに 10km を超える半径収縮を経験したことを解明。
  • 水星のみならず、太陽系内のあらゆる惑星の熱進化を再考するきっかけに。

【概要】
北海道大学大学院理学研究院の西山 学博士研究員らの研究チームは、水星の半径が形成以降10km以上縮んできたことを、最新の水星地形データを用いて明らかにしました。

水星はその形成以来、内部の冷却や固体内核の形成につれて全体が縮み、その証拠として表面にはしわ状の収縮地形が刻まれています。これまでの研究では、こうした構造の分布から水星の半径変化が推定されており、水星の内部進化を解明するための手がかりとして用いられてきました。しかし、収縮地形の分布は本来予想される全球一様なパターンとは異なり、地域によって大きな偏りがあることが分かっており、その成因は謎とされていました。

本研究では、この偏りの一因として、比較的新しいクレーターの噴出物などが堆積することで、古い収縮構造を覆い隠している可能性を検証しました。地形の凸凹度合いの統計量である「ラフネス」を地質学的な「新しさ」の指標として用い、水星全球のラフネスと既知の収縮地形の分布を比較したところ、ラフネスが高い地域ほど収縮地形が少ないという明確な逆相関が見つかりました。これは、ラフネスが高くより新たな地質イベントの影響を受けた地域ほど、元々存在していた構造が覆い隠され、収縮地形が識別されにくくなる可能性を強く示唆します。

この収縮地形の隠蔽の効果を補正すると、水星の半径収縮量はこれまでの推定より最大で30%ほど大きく、12km近くに達する可能性があることが分かりました。この結果は水星内部の冷却史や核の組成といった惑星進化モデルに新たな制約を与えるものです。また、将来の日欧水星探査計画「BepiColombo」によるデータを組み合わせることで、さらに詳細な解析が可能になると期待されます。加えて、月など他の岩石天体でも同様に収縮地形の隠蔽が起きている可能性があり、本研究は今後の収縮地形に基づく天体の熱進化史の解明に向けた新たな解析手法の枠組みとなります。

なお、本研究成果は、2026年9月10日(木)公開のGeophysical Research Letters誌にオンライン掲載されました。

論文名:Underestimation of Planetary Contraction due to Obscuration by Surface Roughness: The Case of Mercury(表面ラフネスによる被覆がもたらす惑星収縮量の過小評価:水星の場合)
URL:https://doi.org/10.1029/2026GL124067

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