研究者情報

佐藤 光輝

教授

SATO Mitsuteru

雷放電で地球や惑星の気象と大気変動を探る

地球惑星科学部門 宇宙惑星科学分野

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研究テーマ

・地球・惑星で発生する雷放電とそれに伴う高高度放電発光現象および高エネルギーガンマ線放射のメカニズム解明
・雷放電を用いたシビア気象の強度発達の直前予測

研究分野超高層大気物理学, 大気電気学, 気象学
キーワード雷放電, 高高度放電発光現象, スプライト, エルブス, 雷放電起源高エネルギーガンマ線, 台風, シビア気象

研究紹介

宇宙空間から雷放電とそれに伴う高高度放電発光現象(スプライト,エルブスなど)を観測し,それらの発生メカニズムの解明に迫る研究を行っています。我々の研究グループが主として開発したGLIMS観測器を,2012年に国際宇宙ステーション(ISS)・日本実験モジュール(JEM)に設置し2015年まで継続的な観測を実施しました(写真「JEM曝露部に設置したGLIMS」参照)。その結果,GLIMSは8,000例を越える雷放電を検出し(図「GLIMSが検出した雷放電の全球分布」参照),その発光形状の多様性を明らかにしました(図「GLIMSが観測した雷放電発光」参照)。それと同時に,検出した雷放電のうち約700ものイベントで高高度放電発光現象を伴っていることも明らかにしました。また,GLIMSは雷放電とスプライトを真上から同時に観測することにも成功し(図「GLIMSが捉えた雷放電とスプライト発光」参照),スプライトが元の雷放電から空間的にズレて発生していることを突き止めました。GLIMSによる世界トップレベルのデータから,この原因を特定するための研究を進めています。

また,地球のみならず金星や木星で発生する雷放電の研究も進めています。金星探査機あかつきに搭載した雷・大気光カメラ(LAC)を用いて金星で発生する過渡的な発光をとらえ,『はたして金星大気には雷放電が発生しているのか?』という長年の謎に決着を付けるための研究を進めています。また,2022年の打ち上げを目指す木星探査ミッション(JUICE)に搭載する可視カメラ(JANUS)を用いて木星の雷放電を観測し,木星の縞模様や大赤斑なのどの渦構造がなぜできるのか?という謎に迫るプロジェクトも進めています(図「木星探査ミッションJUICE」参照)。

地球で発生する雷放電を観測し,台風やゲリラ豪雨などに代表されるシビア気象の規模発達を直前予測するというプロジェクトも進めています。そのために,雷放電の放射するVLF帯電波と,温度・気圧・風向/風速などの気象データを自動的に記録する観測器を新規に開発し,これをフィリピンをはじめとする北西太平洋域の諸国に設置して観測網を構築するプロジェクトも進めています (写真「新規開発した雷・気象観測器」参照)。

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JEM曝露部に設置したGLIMS
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GLIMSが検出した雷放電の全球分布
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GLIMSが観測した雷放電発光
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GLIMSが捉えた雷放電とスプライト発光
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木星探査ミッションJUICE
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新規開発した雷・気象観測器

代表的な研究業績

Photonuclear Reactions Triggered by Lightning Discharge, T. Enoto, Y. Wada, Y. Furuta, K. Nakazawa, T. Yuasa, K. Okuda, K. Makishima, M. Sato, Y. Sato, T. Nakano, D. Umemoto, and H. Tsuchiya, Nature, 2017, 551, 481–484.
Identification of Sprites in JEM-GLIMS Nadir Observations and Their Spatial Distributions, M. Sato, T. Adachi, T. Ushio, T. Morimoto, M. Kikuchi, H. Kikuchi, M. Suzuki, A. Yamazaki, Y. Takahashi, R. Ishida, Y. Sakamoto, K. Yoshida, and Y. Hobara, Terrestrial, Atmospheric and Oceanic Sciences, 2017, 28, 545-561.
Large Stationary Gravity Wave in the Atmosphere of Venus, T. Fukuhara, M. Futaguchi, G. Hashimoto, T. Horinouchi, T. Imamura, N. Iwagaimi, T. Kouyama, S. Murakami, M. Nakamura, K. Ogohara, M. Sato, T. Sato, M. Suzuki, M. Taguchi, S. Takagi, M. Ueno, S. Watanabe, M. Yamada, and A. Yamazaki, Nature Geoscience, 2017, 10, 85-88.
Horizontal Distributions of Sprites Derived from the JEM-GLIMS Nadir Observations, M. Sato, M. Mihara, T. Adachi, T. Ushio, T. Morimoto, M. Kikuchi, H. Kikuchi, M. Suzuki, A. Yamazaki, Y. Takahashi, U. Inan, I. Linscott, R. Ishida, Y. Sakamoto, K. Yoshida, and Y. Hobara, J. Geophys. Res. - Atmos., 2016, 121, 3171-3194.
Overview and Early Results of the Global Lightning and Sprite Measurements Mission, M. Sato, T. Ushio, T. Morimoto, M. Kikuchi, H. Kikuchi, T. Adachi, M. Suzuki, A. Yamazaki, Y. Takahashi, U. Inan, I. Linscott, R. Ishida, Y. Sakamoto, K. Yoshida, Y. Hobara, T. Sano, T. Abe, M. Nakamura, H. Oda, and Z.-I. Kawasaki, J. Geophys. Res. - Atmos., 2015, 120, 3822-3851.
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関連産業分野

宇宙観測, 衛星搭載機器開発, 自然災害予測, 気象学
学位博士(理学)
自己紹介

生まれは東京,育ちは千葉,大学から仙台で,今は札幌です。どんどん北に向かって移動しています。息子と釣りに出かけるのが何よりの気分転換です。

学歴・職歴1996年 東北大学理学部宇宙地球物理学科 卒業
1998年 東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻修士課程修了
1999年12月-2001年3月 第41次日本南極地域観測隊 宙空系越冬隊員として昭和基地に滞在
2004年 東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻博士課程修了
2004年-2007年 独立行政法人理化学研究所 協力研究員,基礎科学特別研究員
2007年9月 東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻 研究協力員
2007年10月 - 2020年8月 北海道大学 大学院理学研究院 講師
2020年9月- 現職
所属学会地球電磁気・地球惑星圏学会, 日本地球惑星科学連合(JpGU), アメリカ地球物理学連合(AGU), 欧州地球科学連合(EGU), 日本大気電気学会, 気象学会
プロジェクトJEM-GLIMSミッション
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS) 『フィリピンにおける極端気象の監視・情報提供システムの開発』
金星探査機あかつきミッション
居室理学部8号館 8-203号室