研究者情報

徂徠 和夫

教授

SORAI Kazuo

銀河の進化を観測から明らかに

物理学部門 非線形物理学分野

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研究テーマ

星間ガスと星生成,銀河の構造の観点を中心に,銀河の進化を観測的に研究.また,南極テラヘルツ望遠鏡プロジェクトにも参加.

研究分野銀河天文学
キーワード銀河, 星間ガス, 星生成, 銀河進化, 観測天文学, 南極天文学

研究紹介

銀河がどのようにして星間ガスから恒星を生成しながら進化してきたのかということを観測から明らかにすることを目指しています.銀河は星と星間物質の集団で,太陽系が含まれている銀河系(天の川銀河)もその一つです.その形状は,銀河系やそのお隣のアンドロメダ銀河のように渦巻型をしたものもあれば,楕円形をしたような形状のもの,また,不規則な形状なものなど様々です.また,孤立して存在する銀河と集団を成して存在する銀河では異なる性質があることもわかっています.このような銀河の多様性がどのようにして生じたのかということを明らかにすることは,銀河の形成と進化を理解する上で不可欠です.私は,近傍の銀河(現在の宇宙の銀河)の中で,星の材料となる星間ガスがどのように分布し,どのような運動をし,どのような密度や温度といった物理状態になっているのか,その結果として,星がどの程度生成されるのかということを観測から調べています.ここ数年間は,国立天文台野辺山宇宙電波観測所の直径45 mの電波望遠鏡を使って,近傍銀河の分子ガス(星間ガスのうち温度の低い成分)の大規模な撮像観測プロジェクト (CO multi-line imaging of nearby galaxies = COMING) に携わってきました.(写真「COMINGプロジェクトで撮像した近傍銀河147天体のCO輝線画像.」参照)

また,上記の観測的研究と並行して,望遠鏡や観測装置の整備・開発にも携わってきました.現在は筑波大学が中心になって進めている南極大陸内陸部にテラヘルツ波を観測できる望遠鏡を建設するプロジェクトに参加しており,電波分光計やデータ解析システムの整備を進めています.

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COMINGプロジェクトで撮像した近傍銀河147天体のCO輝線画像.白い部分ほど分子ガスが多いことを表しています.

代表的な研究業績

CO Multi-line Imaging of Nearby Galaxies (COMING) IV. Overview of the Project,
Sorai, K., Kuno, N., Muraoka, K., Miyamoto, Y., Kaneko, H., Nakanishi, H., Nakai, N., Yanagitani, K., Tanaka, T., Sato, Y., Salak, D., Umei, M., Morokuma-Matsui, K., Matsumoto, N., Ueno, S., Pan, H.-A., Noma, Y., Takeuchi, T.T., Yoda, M., Kuroda, M., Yasuda, A., Yajima, Y., Oi, N., Shibata, S., Seta, M., Watanabe, Y., Kita, S., Komatsuzaki, R., Kajikawa, A., Yashima, Y., Cooray, S., Baji, H., Segawa, Y., Tashiro, T., Takeda, M., Kishida, N., Hatakeyama, T., Tomiyasu, Y. Saita, C.,
Publications of the Astronomical Society of Japan, 2019, Vol.71, SP1, pp.S14:1-42
Properties of Molecular Gas in the Bar of Maffei 2,
Sorai, K., Kuno, N., Nishiyama, K., Watanabe, Y., Matsui, H., Habe, A., Hirota, A., Ishihara, Y., Nakai, N.,
Publications of the Astronomical Society of Japan, 2012, Vol.64, No.3, pp.51:1-10
Large-scale NH3 Observations toward the Galactic Star Forming Regions I. W 51 Molecular Clouds Complex,
Sorai, K., Habe, A., Nishitani, H., Hosaka, K., Watanabe, Y., Miwa, S., Ohishi, Y., Motogi, K., Minamidani, T., Awano, J., Sumida, S., Fukuya, Y., Uchida, R., Kaneko, N., Fujimoto, M. Y., Koyama, Y., Kimura, M., Nakai, N.,
Publications of the Astronomical Society of Japan, 2008, Vol.60, No.6, pp.1285–1296
Distribution and Kinematics of Molecular Gas in Barred Spiral Galaxies. II. NGC 253,
Sorai, K., Nakai, N., Kuno, N., Nishiyama, K., Hasegawa, T.,
Publications of the Astronomical Society of Japan, 2000, Vol.52, pp.785–802
Digital spectrometers for the Nobeyama 45-m telescope,
Sorai, K., Sunada, K., Okumura, S. K., Tetsuro, I., Tanaka, A., Natori, K., Onuki, H.,
Proc. SPIE Vol.4015, pp.86–95, Radio Telescopes, Harvey R. Butcher; Ed., 2000
学位博士(理学)
自己紹介

大阪府出身

学歴・職歴1993年 京都大学理学部 卒業
1995年 東京大学大学院理学系研究科天文学専攻 修士課程修了
1998年 東京大学大学院理学系研究科天文学専攻 博士後期課程修了
2021年-現職
所属学会日本天文学会, 国際天文学連合
プロジェクト国立天文台野辺山宇宙電波観測所45 m電波望遠鏡レガシープロジェクト「近傍銀河の大規模分子ガス撮像観測」
居室理学部2号館 2-316号室

物理学部門 非線形物理学分野

徂徠 和夫

教授

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いま没頭している研究テーマは何ですか?

銀河におけるガスの収支に関する研究です。私たちの住む天の川銀河を含め、銀河は多数の恒星から成り立っています。それらの恒星は低温のガスが集まってできます。銀河にどのようにガスが集まり、どのようなペースで恒星に変わっていったのか、一部は吹き出すガスもあり、供給量と消費量を観測から求め、銀河の進化史を探ります。地味ですが大発見するよりも算盤(そろばん)を弾く方が自分の性に合っているかなと思っています(小学生の時に転校したので、私は算盤ができませんが……)。

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研究に⾏詰まったらどんなことをしますか?

行詰まるということは自分の考えが足りないということなので、考え続けます(短期的には、インスタントコーヒーを入れてみたり、「なんでや〜」と声をあげたりすることもあります)。スマートフォンを触ることに関心がないので、通勤途中でも待合の時間でも、隙間時間があればずっと考えています。結局、スイッチの切り替えが得意でないだけなのですが。不器用なので。大学院生かポスドクだったかの頃に、シャワーを頭からかけると「ひらめく」という体験を2、3度しましたが、残念ながらそれっきりなので今はその方法には期待していません。

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得意なこと、⼤好きなこと、趣味、⽇課を教えてください。

のめり込むということをあまりしないため、趣味と言えるほどのものはありませんが、スキーのジャンプを観るのが好きです。中学生の時にテレビでオリンピックの中継を見て以来、魅せられています。目の前でジャンパーが飛んでいるときの風を切る音がたまらなく好きで、しんどいことがあっても、大倉山であの音を聞くと札幌に来て良かったなと思います。20年早く北海道に来ていたら、自分でも飛んでみたかったです。最近あまり観戦に行けないのが残念です。

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所属・担当