自然史科学専攻 多様性生物学講座III 野外鳥類学研究室の髙木昌興教授、修士課程(当時)の坂本春菜さん、博士後期課程(当時)の青木大輔さん(現 森林総合研究所)、同じく博士後期課程(当時)の植村慎吾さん(現 認定NPO法人バードリサーチ)は、一夫一妻で繁殖すると考えられているスズメが、つがいの巣内に「つがい外のオスとの交尾に由来するヒナ(つがい外父性)」や、「つがい外のメスの托卵によって産み込まれた卵に由来するヒナ(種内托卵)」の双方を含むことを発見しました。さらにつがいのオスは巣内に自らと血縁関係にないヒナが多くなると、子育ての労力を減少させることを明らかにしました。
鳥類の多くは一夫一妻のつがいで繁殖します。ヒナを育て上げるための餌運びの労働コストは非常に大きいため、オスとメスのつがいで繁殖することが有利となるからです。しかしつがいの巣には、つがい外父性や種内托卵によるヒナを含むことがあります。オスはできるだけ多くのヒナを残し、メスは生産性の高い子を残すための繁殖戦略です。自らと血縁関係にはないヒナのために餌を運ぶことは、自身の生存率を下げたり、その後の繁殖に悪影響を与えたりします。そのため一夫一妻のつがい関係とはいえ、オスとメスはヒナの血縁関係と労働の配分という複雑な駆け引きをしながら繁殖しています。
このような背景から自らの巣内に血縁関係のないヒナが存在すると、巣の持ち主である親はヒナへの子育て投資を減少させると推察されてきました。しかしこれを実証するのに適した材料がなく実証は困難な状況にありましたが、北大に生息するスズメを材料にすることでその実証に成功しました。
なお、本研究成果は、2023年1月26日(木)公開の鳥類学国際誌「Ornithological Science」にオンライン掲載されました。
論文名:Genetic parent-offspring relationships predict sexual differences in contributions to parental care in the Eurasian Tree Sparrow(スズメの遺伝的親子関係から予測される育雛貢献の性差)
URL:https://doi.org/10.2326/osj.22.45
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