2024年7月10日、北海道大学大学院理学院 優秀研究奨励賞の授賞式が執り行われました。今年度は数学専攻3名、物性物理学専攻1名、宇宙理学専攻1名、自然史科学専攻6名の計11名が本賞を受賞しました。
会場となったのは90年の歴史がある理学部本館大会議室です。11名の受賞院生(2名欠席)に対し、永井隆哉理学院長が祝辞を述べた後、一人一人に賞状と記念品が手渡されました。
永井理学院長からの祝辞
本日は理学院優秀研究奨励賞受賞おめでとうございます。
この賞は、理学院の教員を指導教員として日本学術振興会特別研究員制度(JSPSフェローシップ)に申請した学生の中で採択された方や、理学院博士課程における研究のステップアップが十分に期待できる学生を表彰し、博士課程での研究の進展を応援することを趣旨としています。
今回受賞した11人の皆さんの中から3名が特別研究員に採択されたと聞いています。不採択だった方は残念でしたが、今年から始まったEXEX博士人材フェローシップに採択されている、あるいは、先月末に締め切られた追加枠に応募された方もいると思います。同時に、もちろん、来年度の特別研究員に再チャレンジ申請されましたよね。EXEX博士人材フェローシップの経済的補助も特別研究員と遜色はないと思いますが、学位取得後のことまで考えると、やはり、特別研究員に採択された実績は対外的ステイタスが高いので、是非チャレンジすべきだと思います。そして本賞の受賞が少しでも加点に貢献してくれることを期待しています。全員が博士課程において経済的なことを心配せず自身の研究に取り組むことができることを切に祈っています。
ところで皆さんが博士課程への進学を決断したきっかけは何でしたか?研究が楽しい、自身が興味を持った事象をもう少し突き詰めてみたいという知的好奇心が最大の要因だったと思います。だからこそ皆さんの熱意が通じて、周りのサポーターの方々を説得できたのだと思います。
博士課程在学中は、経済的なことはもちろん、研究の進捗や将来のキャリアのことなどで、悩みや不安も多いはずですが、私の経験からすると、研究者生活の中で一番自由な発想で、かつ、集中して研究できる貴重な時期です。一日一日を大切に過ごしてください。
未知な現象の解明を目指すのが理学の研究です。予想通りの結果が出るときもありますが、そうならない時も多いです。そのたびに、喜んだり、落ち込んだりすると思います。しかし、後になって振り返ると、なぜうまくいかなかったかを考え、次どうしたらいいかを考えることも実は研究の醍醐味であり、貴重な時間の過ごし方であることに気がつくはずです。
ぜひ、博士課程3年間の生活を楽しんでください。皆さんが研究に打ち込めるように、私たち理学院の教職員はサポートを惜しみません。
改めまして、本日は理学院優秀研究奨励賞の受賞おめでとうございます。
令和6年度 理学院優秀研究奨励賞受賞者リスト
受賞者名 | 専攻・講座 | 研究課題名 |
相原 真生 | 数学専攻 | 特異な準線形偏微分方程式に対する粘性解理論の構築 |
古郷 優平 | 数学専攻 | 微分幾何学に現れる可積分系の準周期解とその曲面 |
田邊 真郷 | 数学専攻 | 相対版・可微分写像の特異点論とその応用 |
加藤 萌結 | 物性物理学専攻 | 新物質探索によるカゴメ反強磁性体モデル物質の開発と磁性の解明 |
高田 翔平 | 宇宙理学専攻 | 超弦理論におけるコンパクト化に基づく現実的な低エネルギー有効理論の探索 |
長岡 頌悟 | 自然史科学専攻/地球惑星ダイナミクス講座 | 歪集中帯における歪解放過程の解明:宇宙測地データを用いた面的な歪場の検出 |
伊藤 雄氣 | 自然史科学専攻/地球惑星システム科学講座 | ヒカゲノカズラ科における新器官の“発見”が拓く植物体制進化研究の新展開 |
上野 健太 | 自然史科学専攻/地球惑星システム科学講座 | 短周期で繰り返される大規模火砕噴火のマグマ集積・噴出過程の解明 |
福地 亮介 | 自然史科学専攻/地球惑星システム科学講座 | 氷河期の山岳地域に特異的な堆積作用の評価およびその堆積物からの古気候変動復元 |
金杉 尚紀 | 自然史科学専攻/多様性生物学講座 | 一夫一妻制鳥類を用いた、交尾声の機能の解明 |
青山 健太郎 | 自然史科学専攻/地震学火山学講座 | PGNNを用いた比抵抗構造の解釈 |