教員

発生の分子基盤を解明し、形態形成の進化的多様性を理解する

楢本 悟史准教授/NARAMOTO, Satoshi

形態機能学系
研究分野
植物生理学・植物発生生物学・細胞生物学・進化生物学
研究テーマ
内的・外的環境に依存した植物の形態形成機構の解明およびその進化的考察

地球上の生物は多様な形態をなしていますが、それらがどのようにして形づくられるのかに興味を持っています。多様性の背後に存在する形態形成の普遍原理および多様性を生み出す仕組みを理解したいと思っています。それらについて理解するために、私は多様な植物(ゼニゴケ・ヒメツリガネゴケ・シロイヌナズナなど)を研究材料として、分子・細胞・個体レベルでの研究を行っています。最近は特に、顕微鏡を用いた「ライブイメージング」の手法を用いて植物の発生・ふるまいを研究することにのめり込んでいます。

私はこれまでに、生物のパターン形成の基本となる、「非対称性」・「細胞極性」の構築機構に関して、主に「細胞内小胞輸送」に注目して研究を行ってきました。北海道大学では、これらの研究に加え、光・重力などの環境に依存した形態形成に関する研究を行います。実験は、遺伝学・細胞生物学・生理学・形態学・生化学等、様々な技術を組み合わせて行っていきます。

<現在取り組んでいる研究の例>
(1)植物細胞の極性形成機構の解析とその進化的考察
コケ植物、維管束植物など複数の植物系統を用いて、細胞の不等分裂やオーキシン排出担体PINの極性局在化の分子メカニズムを明らかにする。得られた結果を複数の植物間で比較解析することで、本機構が植物の進化の過程でどのように獲得されたのか明らかにする。また、植物の形態の多様化にどのように寄与したのかを明らかにする。
(2)植物の外部環境依存的な形態形成機構の解析とその進化的考察
複数の植物系統を用いて、重力や光がどのようにして、葉緑体の局在やPINの局在を変化させ、形態形成を誘導するか明らかにする。宇宙実験など、重力を攪乱する実験なども行う。得られた結果を複数の植物間で比較解析することで、本機構が植物の進化の過程でどのように獲得されたのか明らかにする。

 

ゼニゴケGFP発現体を用いたライブイメージング解析

 

ゼニゴケ胞子の発生過程の模式図

 

ゼニゴケ胞子の不等分裂過程の細胞生物学的解析

 

葉脈パターンが異常になるシロイヌナズナ突然変異体の解析

 

シロイヌナズナを用いたオーキシン極性輸送制御機構の研究

メッセージ

生物学の研究をおこなっていると、生命活動の神秘性・合理性に驚きを覚えます。生命の謎を一緒に解き明かしていくことで、これらについて共感してもらえればと思っています。また、大学生活は、学生が社会に羽ばたいていく前の重要な時期で、そのような機会に教員として接せられることをうれしく思っています。卒業後様々な分野で活躍できるよう、研究活動を通して実践的な教育活動も行いたいと思っています。本研究室に興味がある方、ぜひご連絡ください。一緒に研究をしてくれる人を募集しています。

参考文献

A conserved regulatory mechanism mediates the convergent evolution of plant shoot lateral organs. Naramoto, S, Jones, VAS, Trozzi, N, Toyooka, K, Shimamura, M, Ishida, S, Ishizaki, K, Nishihama, R, Kohchi, T, Dolan, L., and Kyozuka, J. PLoS Biol. 2019 e3000560

Polar transport in plants mediated by membrane transporters: focus on mechanisms of polar auxin transport. Naramoto S. Curr. Opin. Plant Biol. 2017 40:8-14

Insights into the localization and function of the membrane trafficking regulator GNOM ARF-GEF at the Golgi apparatus in Arabidopsis. Naramoto S, Otegui MS, Kutsuna N, de Rycke R, Dainobu T, Karampelias M, Fujimoto M, Feraru E, Miki D, Fukuda H, Nakano A, Friml J. Plant Cell 2014 26:3062-3076

ADP-ribosylation factor machinery mediates endocytosis in plant cells. Naramoto S, Kleine-Vehn J, Robert S, Fujimoto M, Dainobu T, Paciorek T, Ueda T, Nakano A, Van Montagu MC, Fukuda H, Friml J. Proc Natl Acad Sci U S A 2010 107:21890-21895.

Phosphoinositide-dependent regulation of VAN3 ARF-GAP localization and activity essential for vascular tissue continuity in plants. Naramoto S, Sawa S, Koizumi K, Uemura T, Ueda T, Friml J, Nakano A, Fukuda H. Development 2009 136:1529-1538

オーキシン

分裂組織が器官(葉や茎や根)を作るとき、そのきっかけを与えているのは植物ホルモンのオーキシンです。また、多数の器官の間の調整を行っているのもオーキシンです。オーキシン無しには、植物は地球上に出現しなかったのではないかと言われてきて、最近になってもその重要性が再認識されていますが、ほんとうにそうなのかな?

オーキシンは植物の形態形成の鍵となるホルモンです。最大の特徴は極性輸送されるということです。またオーキシンがかかわる生理反応における遺伝子発現制御には、タンパク質の分解が大きく関与していることが最近わかりました。(綿引雅昭)

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細胞の不等分裂

1つの細胞は2つの細胞に分裂します。こうしてできた2つの細胞は全く同じ遺伝子を等しく受け継ぎます。しかし多くの場合でこれら2つの細胞はちがう運命を持ちます。このような過程を細胞の不等分裂とよびます。そして不等分裂こそは、動物でも植物でも多細胞生物がさまざまな細胞を作り出すことを可能にした基本原理なのです。(藤田知道)

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進化

生物は遺伝情報を持ち、そこには新しい変異が絶え間なく生じます。そこにはゲノムの柔軟性が関与し、遺伝子は様々な原因で変化します。また、新しい環境を生き抜くため、新しい変異が集団中に広がり、種は形態、機能的に変化します。(鈴木仁)

生物が長い時間の間生命を受け継いでこられたのは進化の仕組みがあったおかげですし、そもそも生物の誕生も進化によるものです。多様な生物も進化の産物であり、生物の進化の歴史を知ることは生物分類にとって大変重要です。(小亀一弘)

エビもカニもミジンコも、5億年くらい前には1種類の動物でした。時間とともに小さな変化が積み重なって進化したことは確かなのですが、どのようにして小さな変化が起こり、大きな変化になるのかを研究するのが進化学です。

コケムシ類は化石記録も豊富にあるため、包括的な進化研究の格好の材料といえます。(マシュー・ヒル・ディック)

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形態形成

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バイオイメージング

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極性

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細胞内構造

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重力応答

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光応答

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植物オルガノイド

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小胞輸送

小胞体やゴルジ体、液胞、細胞膜などのオルガネラ間の物質輸送システムを膜交通(小胞輸送)と呼びます。これらのオルガネラでは、タンパク質はいったん輸送小胞と呼ばれる小さな小胞へと積み込まれたのち、目的のオルガネラへと運ばれていきます。それぞれのオルガネラのタンパク質組成は、膜交通(小胞輸送)によって制御されています。

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細胞骨格

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