和多 和宏教授/WADA, Kazuhiro
本研究室の目指すものは、ヒトの言語学習を含む個体間コミュニケーション、とくに音声コミュニケーションの学習と生成に関与する、脳神経回路・メカニズムを物質・遺伝子レベルで明らかにしていくことです。実際の研究戦略としては、親鳥の囀りパターンを学習するSongbird(ソングバード: 鳴禽類 図参照)を動物モデルとして用い、分子生物学・神経生物学・動物行動学といった研究手法を駆使し新しい研究分野「分子行動神経学」を立ち上げようとしています。また、どのようにして動物の個体差が行動レベルで現れてくるのかに関心をもって研究を進めています。鳥類と哺乳類の間で、神経回路・遺伝子配列レベルで多くの相同性が存在することが明らかになってきています。ソングバード研究から将来、ヒトの言語習得を含めた脳内分子基盤の理解へつながる研究を目指します。
上記以外にも様々な研究プロジェクトが現在進行中です。将来的には失語障害や吃音(どもり)といったコミュニケーション障害等の医療応用を視野にいれた研究を長期的なビジョンとしてもっています。本研究室は、2007年4月からスタートしました。国内はもとより世界を相手に、自分たちが知りたいことに貪欲に、そして果敢に挑んでいく研究室に成長していきたいと考えています。何もないところからはじめることに「可能性」を感じ、それを「楽しめる」心をもつ人間といっしょに研究をしたいと思っています。人間として誠実で一所懸命にやれる人、やってみようと思う人。「何のために、研究するのか?」これにしっかりとした考えをもつ人。どうぞ、扉が開いています。
参考文献
生まれと育ち
これまで動物行動学では、動物がとる行動はどこまでが生まれ(Nature)で既定されていて、どこからが育ち(Nurture)によるのか?という、「生まれか育ちか」という二分法で考えられてきたことが多々ありました。しかし、これに対し、我々は「生まれに影響された育ち(Nurture via Nature)」という概念をもちこみ研究を進めています。(和多和宏)
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学習臨界期
ヒトの言語は、幼少期ほど容易に獲得されるといわれています。同じ刺激を与えられても、発達時期が異なれば、脳への入力という意味では同じではありません。では何がそうさせているのか?脳神経科学的に、そして分子生物学的に、その謎を解明していくことは、教育学を含む、人間形成の謎を科学的に理解していくことにつながります。(和多和宏)
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個体差
動物をじっと見ているとその行動に個体差があるのが分かります。そこに「生まれと育ち」が関わってくることは何となく分かるような気がします。では、実際にその違いは遺伝子・分子レベルで、一体どのように説明ができるのでしょうか?それを実際に実験で確かめてみませんか?(和多和宏)
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発声学習・生成
ヒトの言語習得とソングバードの囀り学習の間には、神経動物行動学的に高い共通性があります。まず、他個体から音声パターンを聞き、その聞き取った音を、鋳型として脳内に記憶する。次に実際に声を出して、聴覚を介したフィードバックにより自分の音声を修正していく。これを繰り返すことによって、徐々に記憶した音声パターンへ近づいていくのです。(和多和宏)
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北海道大学 大学院生命科学院 理学部生物学科(生物学)行動神経生物学分野 分子神経行動学 和多研究室
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