高木 純平助教/TAKAGI, Junpei
植物や動物などの真核生物の細胞内には、膜によって囲まれた多様な構造体が存在します。これらの構造体は細胞小器官(オルガネラ)と呼ばれ、それぞれに固有の代謝機能を担っています。オルガネラの恒常性の維持に重要な役割を果たすのが、膜交通と呼ばれる物質輸送システムです。植物は、様々な環境ストレスに応答して、膜交通システムを制御し、細胞小器官を柔軟に変化させながら生きています。私たちは、ライブセルイメージング技術や生化学的手法を活用することで、環境変化に対する細胞小器官や膜交通システムの動態を解き明かし、植物の柔軟な環境適応戦略を理解することを目指しています。また同時に、植物の一生を通じて、細胞小器官がどのように維持されているのかということにも興味を持って研究を行っています。
植物の細胞小器官
シロイヌナズナ子葉表皮細胞の小胞体(マゼンタ)とゴルジ体(緑)
小胞体上の輸送小胞形成ドメイン(緑)と輸送小胞の目的地であるゴルジ体(マゼンタ)の相互作用
植物は根を下ろした場所で静かに生きているように見えます。しかし、植物細胞の中では、細胞小器官が活発に流動し、その機能や形態を目まぐるしく変化させています。植物細胞小器官の動態を是非自分の目で観察してみていただけたらと思います。
参考文献
Takagi J., Kimori Y., Shimada T., Hara-Nishimura I. (2020) Dynamic Capture-and-Release of Endoplasmic Reticulum Exit Sites by Golgi Stacks in Arabidopsis. iScience 23(7):101265.
Uemura T., Nakano R. T., Takagi J., Wang Y., Kramer K., Finkemeier I., Nakagami H., Tsuda K., Ueda T., Schulze-Lefert P., Nakano A. (2019) A Golgi-Released Subpopulation of the Trans-Golgi Network Mediates Protein Secretion in Arabidopsis. Plant Physiol. 179(2):519-532.
Shimada T., Takagi J., Ichino T., Shirakawa M., Hara-Nishimura I. (2018) Plant Vacuoles. Annu. Rev. Plant Biol. 69:123-145.
Takagi J., Renna L., Takahashi H., Koumoto Y., Tamura K., Stefano G., Fukao Y., Kondo M., Nishimura M., Shimada T., Brandizzi F., Hara-Nishimura I. (2013) MAIGO5 Functions in Protein Export from Golgi-Associated Endoplasmic Reticulum Exit Sites in Arabidopsis. Plant Cell 25(11):4658-75.
Takahashi H., Tamura K., Takagi J., Koumoto Y., Hara-Nishimura I., Shimada T. (2010) MAG4/Atp115 is a Golgi-Localized Tethering Factor that Mediates Efficient Anterograde Transport in Arabidopsis. Plant Cell Physiol. 51(10):1777-87.
環境適応
生物は、温度・乾燥といった生育環境の変化(非生物ストレスと称します)やウイルスやカビのような病原体の感染(生物ストレス)といった事態に対応・適応することで生き残りを図ります。移動が不可能な植物は、優れた環境適応能力を持っているという特徴があります。(山口淳二、佐藤長緒)
生物の形態、生態、行動、代謝などの性質が、ある環境のもとで生育するのに適していることや、より適した状態に変化することです。例えば、低温性の細菌は、0℃というような低温に適応しており、全ての代謝系の活性を維持し、増殖することが可能です。
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小胞輸送
小胞体やゴルジ体、液胞、細胞膜などのオルガネラ間の物質輸送システムを膜交通(小胞輸送)と呼びます。これらのオルガネラでは、タンパク質はいったん輸送小胞と呼ばれる小さな小胞へと積み込まれたのち、目的のオルガネラへと運ばれていきます。それぞれのオルガネラのタンパク質組成は、膜交通(小胞輸送)によって制御されています。
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翻訳後修飾
タンパク質は翻訳された後にも化学的な修飾を受けます。ユビキチン化、リン酸化、グリコシル化などさまざまな翻訳後修飾があり、これらの修飾によってタンパク質の安定性や活性、局在などが厳密に制御されています。
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オルガネラ
真核生物の細胞に存在する膜によって囲まれた構造のことをオルガネラ(細胞小器官)と呼びます。ミトコンドリア、葉緑体は複膜系オルガネラ、核、小胞体、ゴルジ体、液胞、細胞膜などは単膜系オルガネラに分類されます。オルガネラはそれぞれに固有の機能を担っています。
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ライブセルイメージング
細胞を生きたまま観察する手法のことです。蛍光タンパク質や蛍光色素を用いた標識を行い、共焦点レーザー顕微鏡などを用いて観察することで、目的のオルガネラやタンパク質の動態を解析することができます。
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栄養ストレス
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病害応答
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ユビキチン修飾
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