小亀 一弘教授/KOGAME, Kazuhiro
海藻類は形態が単純なものが多く、分類に用いることができる形態形質が少ないため、系統関係の解析がむずかしく、また、種の分類でも異なる種を同一と見なしていたり、同じ種を別種としていたりすることが多くありました。近年になって発展した、DNAの塩基配列をもとに系統を調べる分子系統解析により、海藻類の分類体系の大きな改訂が行われています。当研究室では、海藻類の分類学的研究の歴史が古く、標本、文献が充実しており、その利点を生かしつつ、最新の分子系統解析を行い、新種の記載、分類体系の改訂、海藻類の種の状況の研究等を行っています。
生物の類縁関係や進化の歴史を調べることは意外とおもしろいものです。また、この生物たちは同種なのか別種なのかとか、答えを出すのがむずかしい問題ほど、はまっていきます。当研究室は、藻類の分類をきちんと学べる数少ない研究室の一つです。世界的な藻類の分類学者を目指してみませんか。
海藻
藻類のうち、海を生活の場とし、多細胞性である程度の大きさになるものを海藻と呼びます。海藻には、緑藻類、褐藻類、紅藻類があります。日本は南北に長く暖流と寒流があり、大変多くの海藻類が生育していて、海藻類の分類学的研究に大変適しています。(小亀一弘)
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系統
生物が進化してきた道筋です。系統樹として具体的に表現することができます。生物の系統は、おもに形態から推定していましたが、近年、DNAの塩基配列を比較的容易に調べることができるようになり、分子情報をもとに系統を探る分子系統学が発展しています。(小亀一弘)
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進化
生物は遺伝情報を持ち、そこには新しい変異が絶え間なく生じます。そこにはゲノムの柔軟性が関与し、遺伝子は様々な原因で変化します。また、新しい環境を生き抜くため、新しい変異が集団中に広がり、種は形態、機能的に変化します。(鈴木仁)
生物が長い時間の間生命を受け継いでこられたのは進化の仕組みがあったおかげですし、そもそも生物の誕生も進化によるものです。多様な生物も進化の産物であり、生物の進化の歴史を知ることは生物分類にとって大変重要です。(小亀一弘)
エビもカニもミジンコも、5億年くらい前には1種類の動物でした。時間とともに小さな変化が積み重なって進化したことは確かなのですが、どのようにして小さな変化が起こり、大きな変化になるのかを研究するのが進化学です。
コケムシ類は化石記録も豊富にあるため、包括的な進化研究の格好の材料といえます。(マシュー・ヒル・ディック)
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藻類
陸上植物(コケ、シダ、種子植物)以外の光合成生物を指します。海藻類や植物プランクトンなどを含みます。ただし、藻類は系統的には大変多様で、例えば褐藻類と緑藻類はどちらも葉緑体をもつ「植物」ですが、進化的には全く異なる仲間です。(堀口健雄)
水中を主な生育場所とする光合成生物です。ミドリムシ、ボルボックス、珪藻、アマノリ、アオノリ、コンブなど、さまざまな生物が藻類に含まれます。地球生態系を底辺で支え、生物進化に大きな影響をおよぼしてきた藻類の研究は、現在とても注目されてきています。(小亀一弘)
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分類
自然には秩序があります。その自然の中に生きている生き物を自然の秩序にしたがって整理、理解することが分類です。
生物に名前をつけ、体系にもとづき整理します。生物の分類、分類体系の構築には、生物学のあらゆる知識を利用します。分類学は、決して古いものではなく、常に新しいのです。(小亀一弘)
生物のグループを認識し、他のグループから区別することであり、ここから分類学的研究が出発します。認識・区別された生物のグループをタクソン(複数形はタクサ)と呼びます。(柁原宏)
分類により認識されたグループは研究の進展に伴い範囲等が変わることがあります。例えば二種だと思われていたものが単一種の種内変異であると結論された場合、同一種だと思われていた個体集団に複数種含まれることが明らかになった場合などが挙げられます。その点において、学名も仮説であると言えます。(角井敬知)
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