北田 一博准教授/KITADA, Kazuhiro
10組に1組の割合で不妊に悩むカップルがいると言われています。精子がまったくできない方もおられます。減数分裂がうまくいかないと、精子が作られません。減数分裂は、単細胞から多細胞のさまざまな生物で観察される生命現象で、そのようなすべての生物種で共通するような基本原理も存在しますが、同時におのおのの生物で違いが見られる多様性も存在します。これまでは酵母を実験生物に用いた減数分裂の研究が盛んに行われてきましたが、われわれはマウスやラットを使用して、ヒトを含む哺乳動物に固有の減数分裂の仕組みを解明しようとしています。1年間をかけて、遺伝学研究を体験してみましょう。実験生物を自ら飼育し、表現型の観察と遺伝子型の決定をしてみましょう。大変地味な作業ですが、そこから複雑な生命現象を単純化して考えることができるようになるのです。
メンデルの遺伝の法則と聞くと、難しいパズルのような問題を解答させられるというイメージを持つ人もいるでしょう。けれども、メンデルは3 : 1という表現型の分離から遺伝子の存在を指摘しているのです。どんな複雑な生命現象も、有限の遺伝子と環境により支配されており、違った表現型(ミュータントなど)を用意して表現型や遺伝子型の分離を観察すれば、生命現象を遺伝子という部品に分解して理解することができるのです。100年以上も前に発見された法則を駆使しながら、現代の生物学は発展しているのです。
減数分裂
生殖細胞が作られる時に起こる特別な細胞分裂で、分裂前後で染色体数が半分になります。染色体数が変化しない分裂は体細胞分裂とよばれます。二つの分裂の共通点や相違点を知ることは、細胞分裂の詳細な仕組みや、その進化を知る上で重要です。(山下正兼)
精子や卵といった配偶子が形成される際に起こる特殊な細胞分裂です。染色体が対合して相同組換えを起こすステップとなります。生物の多様性を確保するシステムですが、その過程にも、生物種によって多様性が存在します。(北田一博)
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実験生物
多様な様相を見せる生命現象にも、多くの種で共通する基本原理も存在します。その基本原理を解明するために、代表となるモデルとして、研究しやすい条件を備えた生物種を用いて研究を進めます。(北田一博)
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