教員

光で探る脳のシステム

小川 宏人教授/OGAWA, Hiroto

行動神経生物学系
研究分野
システム神経生物学
研究テーマ
動物の行動基盤となる神経システムアーキテクチャの解析

動物の脳・神経系は、21世紀の生命科学に残された未知の領域の一つです。その解明の難しさは、構造の複雑さだけでなく、情報処理という脳の機能が構成要素である分子や細胞の振る舞いに単純に還元できないという特性にあります。したがって、脳機能を理解するためには、ニューロンと細胞内分子の相互作用や、神経ネットワークの活動パターンと行動との関係など、異なる階層間でのシステム構成や動作原理(アーキテクチャ)を明らかにする必要があります。私たちは、昆虫の神経系を材料として、様々なレベルの神経活動の時空間パターンを光学イメージング法によって解析し、脳のシステムアーキテクチャを理解することを目指しています。

メッセージ

動物は外界をどのように捉え、認識し、行動を企画し、運動を制御するのか?私たちの研究室では、この問に対して、ある行動について入力から出力までの全ての神経情報処理過程を明らかにすることによって答えようとしています。そのために、脳神経活動を時空間的に計測することができる光学イメージングを進めています。さらに最近では遺伝子改変動物の作成や遺伝子コード型蛍光プローブの遺伝子導入にも取り組んでいます。生命科学の研究を進めるためには、新しい研究手法の開発や導入が欠かせません。それには困難も多く、ときには研究が思うように進まないこともありますが、誰も見たことがない生命現象を目の当たりにする興奮は、何物にも代え難い喜びです。私たちは、どん欲な好奇心を持ち、難しい課題にも果敢に挑戦していく開拓精神(フロンティアスピリット)にあふれる皆さんを待っています!

参考文献

  • コオロギの電気生理学実験  in「身近な動物を使った実験4—ミツバチ、コオロギ、スズメガ」鈴木範男 編 pp. 58-64、 三共出版
  • 針刺し運動 —動き続けるミツバチの針. in 「動物の「動き」の秘密にせまる—運動系の比較生物学 」尾崎浩一、吉村建二郎 編、pp. 194-212、 共立出版
  • 光学計測法が明らかにするニューロン内情報処理機構 in「昆虫ミメティクス —昆虫の設計に学ぶ—」下澤楯夫、針山孝彦 監修、 p650-656. NTS
  • ミツバチの針刺し機構  in「昆虫ミメティクス —昆虫の設計に学ぶ—」下澤楯夫、針山孝彦 監修、 p827-830. NTS
  • 神経生物学研究におけるイメージング技術の最近の動向 比較生理生化学 25: 21-22
  • 機能が同定された感覚性介在ニューロンにおける樹状突起の能動的特性 生物物理 45: 198-202
  • 感覚性介在ニューロンの樹状突起における情報抽出および統合処理機構 比較生理生化学 22: 2-10
  • Miller, J. P., Jacobs, G. A. and Aldworth, Z. 著 小川宏人 訳(2008)コオロギ尾葉の機械感覚システムの機能構成 in「昆虫ミメティクス —昆虫の設計に学ぶ—」下澤楯夫,針山孝彦 監修, p231-243. NTS

光学計測(イメージング)

生体や細胞の中の分子の増減や動き、構造変化を光量の変化によってとらえる手法をいいます。分子に結合して発光したり蛍光の強さが変化したりするプローブを用いますが、最近では蛍光タンパク質を利用した遺伝子コード型プローブも開発されました。特に神経科学分野では脳の神経活動をイメージングするために様々な方法や顕微鏡が開発されています。(小川宏人)

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シナプス可塑性

ニューロン同士の結合部であるシナプスでは、軸索終末側(シナプス前ニューロン)から樹状突起側(シナプス後ニューロン)へ信号が受け渡されます。成長や再生過程のほか学習することによって新たにシナプスができたり、シナプスでの伝わりやすさが変化したりする現象をシナプス可塑性といいます。(小川宏人)

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神経情報処理

脳の神経回路が行う情報処理は、コンピュータなどと異なり、分散・並列処理を特徴としています。また神経回路は固定されたものではなく、成長・発達や学習・経験によって変化していきます。そのため私たちの脳はコンピュータよりもずっと柔軟で複雑な処理が可能になるのです。(小川宏人)

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ニューロン

神経細胞のことで、神経系における機能的単位として働きます。脳はしばしばコンピュータにたとえられますが、実は個々のニューロンが、情報を集め、処理し、記憶し、計算結果を出力するというコンピュータの働きをしています。ヒト脳には、そのニューロンが数千億から数兆個存在します。

神経細胞ともいいます。脳を構成する基本単位となる細胞で、シナプス部位でほかのニューロンと結合して神経回路をつくります。この神経回路上で様々な情報処理が行われます。(小川宏人)

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北海道大学 大学院理学研究院 生物科学部門 行動神経生物学分野 小川宏人研究室

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