教員

植物が土に生きるための知恵

三輪 京子教授/MIWA, Kyoko

環境分子生物学系
研究分野
植物分子遺伝学 環境科学
研究テーマ
植物の無機栄養環境への応答機構の解明

発芽した場所から動けない植物はどのようにその土壌環境に適応しているのでしょうか?植物は土壌から無機元素を吸収し、それらを自分の栄養として利用して光合成をして生産者として生きています。しかし、土に必要な元素が常に十分あるとは限らず、有害な元素も存在しています。植物は無機栄養の過不足に適応するしくみを発達させてきました。「どのように体内・体外の栄養状態を感知して、輸送や代謝、成長を制御しているのか?」「応答の多様さは個々の土壌環境でどのように発達してきたのか?」に分子レベルで答えることを目指しています。また、遺伝子の知見をもとに、無機栄養欠乏・過剰のストレスに耐性な植物の作出も取り組んでいます。

メッセージ

植物の遺伝子研究の魅力のひとつは、遺伝子の違いを細胞、組織、そして個体のふるまいの違いとして目で見て実感できることにあると思います。たった一つのDNAの塩基配列が変わっただけで、植物個体がこんなに変わるのかと驚き、未知の可能性を感じます。遺伝子の新しい機能を見つけたとき、「何万年も前からこの遺伝子は(ひとしれず)こうやって働いていたのか」と思いをはせることができるのも喜びです。また、不良土壌環境にも耐える植物をつくるための可能性を拓き、新たな遺伝子資源の発掘に貢献したいと考えています。

参考文献

  • 高橋英一「肥料の来た道帰る道 ―肥料を通して環境・人間問題を考える」のぎへんのほん、研成社、1991年、ISBN 978-4876393534
  • Miwa, K., Takano, J., Omori, H., Seki, M., Shinozaki, K., Fujiwara, T. (2007). “Plants tolerant of high boron levels.” Science 318, 1417.
  • Miwa, K., Takano, J., Fujiwara, T. (2006). “Improvement of seed yields under boron-limiting conditions through overexpression of BOR1, a boron transporter for xylem loading, in Arabidopsis thaliana.” Plant Journal. 46, 1084-1091.

ストレス応答

生物は常に変動する外部環境に応答して、その変動に適応する反応を起こす必要があります。様々なストレスに対して、特異的な応答をすることにより、細胞そして生物個体を守っています。(三輪京子)

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必須栄養素

植物の一生を完結するために必要な17種類の元素です。植物はC、H、O以外の14種類の元素を土壌から獲得する必要があり、不足すると成長や生殖に異常が起こります。植物は吸収量の増加や代謝の変化をすることにより、栄養不足の環境にも対応しています。(三輪京子)

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輸送体

膜に埋め込まれたタンパク質で、膜を横切るときの物質の運搬を担う「運び屋(トランスポーター)」です。基質特異性・親和性や輸送の方向性の異なる多様な輸送体によって、細胞や細胞小器官内外への選択的な物質の輸送や分配が行われます。(三輪京子)

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