勝 義直教授/KATSU, Yoshinao
生物は生殖器官で卵と精子を作り子孫を残します。この生殖器官の発生、性の分化、生殖行動にはエストロゲン(女性ホルモン)やアンドロゲン(男性ホルモン)などの性ホルモンとよばれる脂溶性低分子のステロイドホルモンが密接に関わっています。これら性ホルモンは核内受容体のファミリーである性ステロイドホルモン受容体と結合して機能します。私たちの研究室では、様々な生物種から性ホルモン受容体遺伝子のクローニングを行ない、「進化上いつから性ホルモン受容体が出現したのか?」という生命現象の根本に関わる研究を進めています。さらに、性ホルモンが関わる性の分化・決定機構を探るために、温度で性が決まる爬虫類を用いた研究を行っています。また、環境ホルモンの影響を調べるためのアッセイ系の開発など国内外の研究者と共同研究を行ないながら研究を進めています。
私たちの研究室では、性ステロイドホルモン、性ステロイドホルモン受容体、生殖、性分化・性決定、環境ホルモンをキーワードとして研究を進めています。2009年4月からスタートした新しい研究室です。この研究室の歴史を作るのは若い君たちです。一緒に生物の神秘を探求しましょう。
参考文献
- 「レポータージーンアッセイを利用した魚類エストロゲン受容体の種特異性」環境ホルモン学会 ニュースレター Vol. 10, No. 4 (2008)
- シリーズ21世紀の動物科学10 社団法人日本動物学会 監修「内分泌と生命現象」長濱 嘉孝/井口 泰泉 共編 (2007年:培風館)3章:環境物質の内分泌現象 pp77-115
温度依存的性決定
多くの脊椎動物は、性染色体をもっており遺伝子によって性が決定されます。しかし、爬虫類のうちワニ、ほとんどの種のカメ、一部のトカゲ類は性染色体を持っていません。これらの動物の性は、地中に産みつけられた卵の胚発生時の温度によって性が決定します。(勝義直)
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核内受容体
転写因子として働く細胞質性タンパク質の一種です。ホルモン等が結合することで核内での遺伝子の転写を調節する受容体です。細胞の増殖・分化や代謝調節など高等動物における多くの高次生命現象の制御に中心的な役割を果たしています。(勝義直)
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環境ホルモン
正確には「内分泌かく乱化学物質」といいます。天然のホルモンは生体内で作られ体内の各所に運ばれますが、環境ホルモンは外部から身体に取り込まれて、性ホルモンのように振る舞ったり、生殖や行動等に関連するホルモンの作用を阻害する性質を持っています。(勝義直)
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性ホルモン
女性ホルモンであるエストロゲンや男性ホルモンであるアンドロゲンなどを含むステロイドホルモンの一種で、生殖器官に作用してその発生・分化、精子や卵子の成熟、妊娠の成立・維持等にとても重要な働きをしています。(勝義直)
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性ホルモン受容体
核内受容体の一種で、エストロゲンやアンドロゲンなどの性ホルモンと結合する事により細胞内で標的遺伝子の発現制御を行なっています。「性ホルモンの働き」とはこの「性ホルモン受容体の働き」のことを意味しています。(勝義直)
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