阿部 剛史准教授/ABE, Tsuyoshi
ソゾという海藻は食用にされないので一般には無名ですが、海藻の中では大きなグループです。陸上生物には見られない変わった構造の化合物を作ることから、海藻学者だけでなく有機化学者からも盛んに研究されてきました。ソゾの種類と化合物の種類には関連があり、色々な種類のソゾから、すでに500種以上の新奇化合物が発見されており、現在も、特に東南アジアなどの調査では、次々と新種のソゾが見つかり新奇化合物が見つかっています。主に北大地球環境科学研究院の海洋天然物化学教室と協力し、ソゾの研究を進めています。
ソゾの研究の他、知床や極東ロシアなど環オホーツク域の海藻相全般についての研究も実施しています。
ソゾの研究を「推理小説を読むような」と表現したのは私の恩師に当たる先生の言葉です。ウラソゾは「裏日本のソゾ」、主に日本海に分布することから付いた名ですが、じつは岩手・宮城や北海道全域にも生育し、よく見ると対馬暖流とその支流に沿った分布と判ります。そして、ソゾ類全体の分布から見てウラソゾは南方起源、日本海の古環境研究によれば対馬暖流の流入開始は8000年前、ケミカルレースの地理的分布、生合成経路、といったヒントが次々と明らかになると、単なる裏日本のソゾと思っていたものが、縄文時代に南から日本海に侵入し、環境に合わせて防御物質を変化させながら北へと分布を広げた様子が、ありありと見えて来るのです。
参考文献
海洋天然物化学
生物が産生する物質を扱う有機化学を天然物化学と呼び、抗癌剤や抗生物質といった新薬探索などの目的で盛んに研究されています。海藻・海綿・ホヤなどの海洋生物を対象とした海洋天然物化学では、陸上生物には見られない新奇化合物が次々と発見されています。(阿部剛史)
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ケモタクソノミー
生物の持つ化学成分を手がかりとして分類をする方法です。形だけでは区別できなかった生き物どうしに違いを見いだすことができたり、化学物質の合成経路と考え合わせることにより生物の類縁関係のヒントが得られたりします。(阿部剛史)
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種内分化
生殖的に隔離されていない同一種に含まれながら、個体群によって性質に違いが見られる場合があります。対馬暖流に沿って分布するウラソゾという海藻の場合、地域個体群ごとに生体防御のための化学成分に違いがあり、ケミカルレースと呼ばれます。(阿部剛史)
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対馬暖流
対馬海峡は比較的浅く、氷河期には日本海に暖流は入ってきませんでした。日本近海には対馬暖流に沿った地理的分布を示す固有種がいくつも見られますが、これらは生物の長い歴史に比べ一瞬とも言える最終氷期後の1万年ほどで分布を拡げたと考えられます。(阿部剛史)
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