亜熱帯島嶼のフクロウの個体群動態を最新統計手法で解明
多様性生物学講座の髙木昌興教授らの研究グループは、大阪市立大学の学生諸氏と共同で、沖縄県南大東島に生息するフクロウ科の一種リュウキュウコノハズクの詳細な個体群動態の解明に成功しました。本研究には当学科に関連する大学院の博士後期課程の澤田明さんが共同第一著者として貢献しており、北大のプレスリリースでも紹介されています。以下、髙木先生による解説です。
フクロウ科の大部分の種は島嶼と熱帯域に分布していますが、これまでのフクロウ研究は大陸の温帯域や寒帯域の種類に集中しています。その理由として、島嶼や熱帯域へのアクセスの悪さやフクロウの夜行性という性質が挙げられ、これらの要因により島嶼と熱帯域での調査や研究科学的知見に基づいた保全活動が妨げられています。特定の島の固有種や熱帯雨林の奥地に生息する種類も多く、それらは人知れず絶滅の危機に瀕している恐れがあります。
本研究では亜熱帯島嶼である南大東島に生息するリュウキュウコノハズクについて、長期にわたる様々な生態データを用いて個体群動態を解析しました。解析には2012〜2018年の調査で得られた903個体の標識再捕獲履歴や延べ2,526個体のカウントデータが用いられました。
その結果、メスの生存率がオスよりもわずかに低く、メスの個体数はオスより少ないこともわかりました。保全対象になるような小さな集団では、しばしば性比は確率的に変動し、その性比の偏りが個体群の存続に影響します。本研究では、性比を仮定することなく、オスの個体数とメスの個体数を推定することができました。
また、全体の個体数は減少傾向にあり、個体数の減少がメスの生存率の低さの影響を受けていることもわかりました。メスの個体数減少の主要因は、人為移入されたネコとイタチによる繁殖期のメスの捕食と考えられ、今後の対策の必要性が明らかになりました。
本研究成果は、情報の少ない非温帯島嶼域のフクロウ科の中では最も詳細な個体群動態に関するもので、今後の島嶼域や熱帯域のフクロウ研究における基盤となり、世界のフクロウ保護に大きく貢献することが期待されます。
なお、本研究は、プロ・ナチューラ・ファンド、株式会社モンベル、科学研究費補助金(課題番号17770019, 21570022, 24570107, 16H04737) の支援を受けて行われました。
発表論文:Akira Sawada, Tetsuya Iwasaki, Chitose Inoue-Kawai, Kana Nakaoka, Takumi Nakanishi, Junpei Sawada, Narumi Aso, Syuya Nagai, Haruka Ono, Masaoki Takagi (2021) Missing piece of top predator-based conservation: demographic analysis of an owl population on a remote subtropical island. Population Ecology (in press)【https://esj-journals.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/1438-390X.12080】