研究トピックス

硝酸誘導性の植物成長促進を制御する鍵因子BT1/2を単離

形態機能学系の佐藤長緒先生と山口淳二先生のグループが、植物の硝酸応答に関する新しい発見を論文発表しました。東京大学の柳澤博士との共同研究となっています。以下、佐藤先生による解説です。

植物は、土壌中の無機窒素を同化することでアミノ酸や核酸をはじめとする様々な有機代謝物を合成しています。窒素同化は、従属栄養生物である私たちヒトにとっても欠かせない栄養素を提供するための、重要なステップです。無機窒素の中でも、特に硝酸イオンは植物の成長に重要であり、またそれ自身がシグナル物質として細胞内の遺伝子発現を制御することで、窒素の取込み、代謝や個体の成長に大きく影響することが知られています。硝酸シグナルの受容と伝達については長年不明でしたが、最近の研究から、硝酸応答性の遺伝子発現マスターレギュレーターとして転写因子NLPが発見されたことで、大きな注目を集めています(Konishi and Yanagisawa, 2013, Nat. Comunn.)。

今回の論文では、NLPの新規標的遺伝子として、BT1/2を単離しました。BT1/2は、核局在性のBTB型タンパク質(タンパク質間相互作用に関わるBTBドメインを持つタンパク質でユビキチンリガーゼ複合体を形成します)で、ヒストン修飾やタンパク質ユビキチン化との関連が予想されていますが、その生理学的意義や生化学的機能の詳細は謎でした。東京大学・柳澤博士と私達の共同研究から、NLPがBT1/2のプロモーター領域に直接結合し硝酸応答性の転写を制御することが明らかになりました。さらに、外性プロモーターによるBT2過剰発現によりnlp機能抑制変異体の成長阻害が回復することから、BTタンパク質が植物の成長制御に重要な硝酸シグナル伝達因子であることが分りました(図)。

現在、このBTタンパク質の生化学的機能の解明に取り組んでいます。また、BT1/2遺伝子の発現は、硝酸イオンだけでなく、糖や他の無機イオンによっても影響を受けることが分ってきており、BT転写制御が硝酸と他の栄養素シグナルのクロストークの場として機能することにも注目しています。

NLP-BT経路による植物の硝酸応答性成長制御

発表論文: Sato TϮ, Maekawa SϮ, Konishi MϮ, Yoshioka MϮ, Sasaki Y, Maeda H, Ishida T, Kato Y, Yamaguchi J, Yanagisawa S* (2017) Direct transcriptional activation of BT genes by NLP transcription factors is a key component of the nitrate response in Arabidopsis. Biochemical and Biophysical Research Communications 483: 380-386. [Ϯequally contributed] (http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0006291X16321957)