小鳥ヒナの「バブバブ(喃語 babbling)」には個体ごとに違いがあることを発見
行動神経学系の和多和宏先生のグループが生物の個体差に関する興味深い研究成果を論文発表しました。以下、和多先生による解説です。
ヒトの言語や小鳥のさえずりは、発声学習によって獲得されます。発声学習で獲得される発声パターンには個体差が生まれ、それが個体識別や個体間コミュニケーションに重要になります。しかし、どのようにして個体ごとに少しずつ異なる発声パターンを学習しているのか、よく分かっていませんでした。今回の研究では、学習の最も初期の発声、つまりヒト赤ちゃんの喃語(babbling)に相当する発声を出す時に、既にその発声パターン(テンポ)に個体ごとに違いが存在することが分かりました。この学習初期で見られる発声パターンの個体差は、家族間でその違いがさらに大きくなることが生育実験で明らかになりました。また、耳を聞こえなくする実験では、小鳥ヒナの発声のテンポが速くなりますが、個体差そのものは消えないことが確認されました。これらの結果は、発声学習の最初期において発声の仕方にすでに個体差が存在し、それが遺伝的要因の影響を受けていることを意味します。この学習初期の個体差がその後の発声学習発達にどのような影響を与えるのか、今後の研究で明らかにしていく予定です。
発表論文: Saito D., Mori C., Sawai A., and Wada k. (2016) Familial bias and auditory feedback regulation of vocal babbling patterns during early song development. Scientific Reports 6: 30323 (http://www.nature.com/articles/srep30323)