澤田 明助教/SAWADA, Akira
ある生物集団の1個体1個体を識別してその集団を何十年と追いかけるような研究は、標識個体群の長期研究と呼ばれます。このような研究では、さまざまな形質と遺伝子の情報にあわせて、どの個体がいつどのようにどれだけ子孫を残したかの記録が複数世代にわたって蓄積されます。適応度の実証データとともに現在進行形の進化を捉えることができるのです。私は南西諸島のリュウキュウコノハズクという鳥類について、このような標識個体群の長期研究に取り組んでいます。「島」は進化の実験室とも呼ばれるように、生態系の独自性や単純さから、生物の進化や生態を調べる格好の舞台となります。私の研究ではリュウキュウコノハズクの基礎生態調査を通して、生物全般に関わる進化のメカニズムの理解を試みます。特に配偶者選択や個体群動態、生活史進化に興味を持っています。毎年できる限り長い時間を調査地の島に滞在し、徹底的な野外調査を行っています。研究対象種をとりまく環境の理解も重要と考えることから、分類群を問わず広く島の生物相の解明にも取り組んでいます。

データ解析技術が発展したり短期的成果が求められたりする時代であるがゆえに、長期的なデータの蓄積と取得基盤を有することの優位性は大きくなるはずです。生態学や進化学には長期データがなければ取り組めない研究課題があるからです。この優位性はタイムマシンが発明されて自由に過去のデータをとりに行けるようにならない限り覆ることはないでしょう。私は自身の研究活動を通して、基礎研究や長期的視点の重要性も示していきたいと考えています。標識個体群の長期研究の膨大な基礎データがあれば、着眼と工夫次第でさまざまな研究を展開できます。皆様も、無限の可能性を秘めた長期研究に一緒に取り組んでみませんか?
参考文献
Sawada A. (2025). Japanese Weasels Mustela itatsi predate Ryukyu Scops Owls Otus elegans and Ruddy Kingfishers Halcyon coromanda in the Ryukyu Islands. Ornithological Science. 25(1): 97–104.
澤田明 (2024). ダイトウコノハズクの長期研究 標識が教えてくれること. どうぶつと動物園. 74(4): 20–25.
Sawada A., Iwasaki T., Akatani K & Takagi M. (2022). Mate choice for body size leads to size assortative mating in the Ryukyu Scops Owl Otus elegans. Ecology and Evolution. 12(12): e9578.
Sawada A., Iwasaki T., Inoue C., Nakaoka K., Nakanishi T., Sawada J., Aso N., Nagai S., Ono H. & Takagi M. (2021). Missing piece of top predator-based conservation: demographic analysis of an owl population on a remote subtropical island. Population Ecology. 63(3): 204–218.
Sawada A., Ando H. & Takagi M. (2020). Evaluating the existence and benefit of major histocompatibility complex-based mate choice in an isolated owl population. Journal of Evolutionary Biology. 33(6): 762–772.
生活史
鳥を例にとれば、個体は、孵化し、親の給餌や世話を受けながら成長し、配偶相手をみつけて繁殖・育雛する、という生活史環を経て、次の世代へと交代していきます。が、この過程で経験されるさまざまな要因が個体の行動に影響を与えます。(相馬雅代)
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