教員

「なぜ?本当に?」を大切に

角井 敬知講師/KAKUI, Keiichi

多様性生物学・進化学系
研究分野
動物系統分類学
研究テーマ
海産無脊椎動物を主とした分類学と系統学,タナイス目甲殻類の生物学

2010年に発表された研究によると、日本近海からはこれまでに2万5千種を超える「名前の付いた」動物が報告されている一方、まだ「名前の付いていない」動物(未記載種)はその4倍近く生息しているだろうといわれています(Fujikura et al. 2010: PLoS ONE 5)。私はタナイス目(図1)という体長数ミリ程度の水生甲殻類の一群を対象に、未記載種に名前を付けていく記載分類学的研究と、タナイス同士の類縁関係と進化史を明らかにする系統学的研究を主に行っています。また、タナイス類の示す興味深い形態や性質に着目し、飼育実験や各種形態観察手法を導入して、彼らの生物学的側面についても研究しています。

図1. さまざまなタナイス目甲殻類
メッセージ

系統分類学の分野に限って言っても、先に見た膨大な未記載種の数からも分かるとおり、分かっていないことは山ほどあります。また真実のように扱われている事象・考えが実はちゃんと検証されていない一つの仮説に過ぎないこともままあります。目の前の現象に対して素朴に「なぜ?」と問い、既存の仮説や業界の常識を盲信せずに「本当に?」と自分で考えてみる姿勢は、将来どの分野に進むとしてもとても大切だと思います。

参考文献

  • Kakui K, Nomaki H, Komatsu H, Fujiwara Y (2020) Unexpected low genetic differentiation between Japan and Bering Sea populations of a deep-sea benthic crustacean lacking a planktonic larval stage (Peracarida: Tanaidacea). Biological Journal of the Linnean Society 131: 566–574.
    DOI: 10.1093/biolinnean/blaa106
  • Okamoto N, Oya Y, Kakui K (2020) A new species of Zeuxo (Crustacea: Peracarida: Tanaidacea) from Japan, with remarks on carapace pigmentation as a potentially useful taxonomic character. Marine Biology Research 16: 411–422.
    DOI: 10.1080/17451000.2020.1766693
  • Kakui K, Fujita Y (2020) Paradoxapseudes shimojiensis sp. nov. (Crustacea: Tanaidacea: Apseudidae) from a submarine limestone cave in Japan, with notes on its chelipedal morphology and sexual system. Marine Biology Research 16: 129–136.
    DOI: 10.1080/17451000.2020.1720249
  • Kakui K (2019) Shell-exchange behavior in a hermit-crab-like tanaidacean (Crustacea: Malacostraca). Zoological Science 36: 468–470.
    DOI: 10.2108/zs190048
  • Kakui K, Hayakawa Y, Katakura H (2017) Difference in size at maturity in annual and overwintering generations in the tanaidacean Zeuxo sp. in Oshoro Bay, Hokkaido, Japan. Zoological Science 34: 129–136.
    DOI: 10.2108/zs160134

系統

生物が進化してきた道筋です。系統樹として具体的に表現することができます。生物の系統は、おもに形態から推定していましたが、近年、DNAの塩基配列を比較的容易に調べることができるようになり、分子情報をもとに系統を探る分子系統学が発展しています。(小亀一弘)

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体系化

認識されたタクソンを入れ子式の階層として整理する行為であり、分類学的行為の結果の1つです。体系化の方法論にはさまざまな立場・主張があり、命名法の改善・改訂の動きと並行して現在でも研究者間で活発な議論が続いています。(柁原宏)

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体系学

分類学・系統学・進化学・生物地理学などの諸学を包含する学問分野です。(柁原宏)

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分類

自然には秩序があります。その自然の中に生きている生き物を自然の秩序にしたがって整理、理解することが分類です。

生物に名前をつけ、体系にもとづき整理します。生物の分類、分類体系の構築には、生物学のあらゆる知識を利用します。分類学は、決して古いものではなく、常に新しいのです。(小亀一弘)

生物のグループを認識し、他のグループから区別することであり、ここから分類学的研究が出発します。認識・区別された生物のグループをタクソン(複数形はタクサ)と呼びます。(柁原宏)

分類により認識されたグループは研究の進展に伴い範囲等が変わることがあります。例えば二種だと思われていたものが単一種の種内変異であると結論された場合、同一種だと思われていた個体集団に複数種含まれることが明らかになった場合などが挙げられます。その点において、学名も仮説であると言えます。(角井敬知)

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命名

認識されたタクソンに名称を与えることであり、分類学の営みの一部です。与えられたタクソンの名称を学名と呼びます。学名を運用するルールには『国際動物命名規約』、『国際植物命名規約』などがありますが、全く新たな生物命名法を模索している研究者も存在します。(柁原宏)

種の学名である種名は、担名タイプという一個体ないしは少数の標本に担われています。世界共通の参照基準である担名タイプは、将来的な再観察の可能性を担保するために、然るべき場所にて保管・維持されるよう勧告されています。然るべき場所として重要なものの一つに博物館が挙げられます。(角井敬知)

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