市原 健介助教/ICHIHARA, Kensuke
主に緑色海藻類を材料として、多様性を生み出す仕組みについて研究を進めています。海藻類は陸上植物にはない、様々なタイプの生活環と生殖様式を持つ種を含む多様性に富んだ生物群です。近年のゲノム解析技術の進歩によって、海藻類でもゲノム情報の取得が簡単にできるようになりました。また、ゲノム編集技術を利用することで、海藻類でも遺伝子機能の解析が可能になりつつあります。これらの新しい技術と、培養実験や形態観察を組み合わせることで、生殖様式進化や環境適応といった生物多様性を生み出す仕組みを遺伝子レベルで理解したいと考えています。
左: 室蘭の春の海藻の様子、右:アオノリの一種
左: スジアオノリの雌性配偶子、右: 走査型電子顕微鏡で観察した雌雄配偶子の接合
海岸線を彩る大小さまざまな海藻は、海洋という刻々と変化し続ける環境にどのように適応し、これまで生き残ってきたのでしょうか?海藻の生態や生殖様式には、まだまだ未知の部分があふれています。さまざまな海藻類が繁茂する海での海藻採集、海の見える実験室での実験、海を身近に感じられる室蘭で研究に取り組んでみませんか。
参考文献
- Ichihara, K., Yamazaki, T., Miyamura, S. et al. Asexual thalli originated from sporophytic thalli via apomeiosis in the green seaweed Ulva. Sci. Rep. 9, 13523 (2019). https://doi.org/10.1038/s41598-019-50070-x
- Yamazaki, T., Ichihara, K., Suzuki, R. et al. Genomic structure and evolution of the mating type locus in the green seaweed Ulva partita. Sci. Rep. 7, 11679 (2017). https://doi.org/10.1038/s41598-017-11677-0
- Ichihara, K., Shimada, S. & Miyaji, K. Systematics of Rhizoclonium-like algae (Cladophorales, Chlorophyta) from Japanese brackish waters, based on molecular phylogenetic and morphological analyses. Phycologia 52, 398 – 410 (2013). https://doi.org/10.2216/12-102.1
- Ichihara, K., Arai, S., Uchimura, M. et al. New species of freshwater Ulva, Ulva limnetica (Ulvales, Ulvophyceae) from the Ryukyu Islands, Japan. Phycol. Res. 57, 94-103. (2009). https://doi.org/10.1111/j.1440-1835.2009.00525.x
海藻類
肉眼で認識できる藻類で、体色の違いから緑藻・紅藻・褐藻の3つのグループに大別されます。体色の違いは葉緑体に含まれる光合成色素の違いによりますが、特に補助色素の含有量の違いによって生じています。(長里千香子)
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環境適応
生物は、温度・乾燥といった生育環境の変化(非生物ストレスと称します)やウイルスやカビのような病原体の感染(生物ストレス)といった事態に対応・適応することで生き残りを図ります。移動が不可能な植物は、優れた環境適応能力を持っているという特徴があります。(山口淳二、佐藤長緒)
生物の形態、生態、行動、代謝などの性質が、ある環境のもとで生育するのに適していることや、より適した状態に変化することです。例えば、低温性の細菌は、0℃というような低温に適応しており、全ての代謝系の活性を維持し、増殖することが可能です。
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有性生殖
一般的な卵と精子による有性生殖(卵生殖)に加えて、藻類には雌雄配偶子の形態が同じである同形配偶子接合、雌性配偶子が少しだけ大きい異形配偶子接合が観察できます。藻類は有性生殖のモデルを考える上でも興味深い分類群です。(本村泰三)
精子と卵子が受精して子がうまれる生殖方法です。有性生殖を行う生物には、卵子をつくるメスの機能と精子をつくるオスの機能が、一個体のなかに共存している雌雄同体生物、別々の個体に存在している雌雄異体生物がいます。(黒岩麻里)
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無性生殖
生殖細胞の形成や融合を含まない生殖で、二分裂、出芽、無性胞子形成や栄養繁殖等があり、子は親と同じゲノムを持つ。(市原健介)
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ウェブサイト
http://www.fsc.hokudai.ac.jp/muroran/
所属研究院
担当大学院
環境科学院
生物圏科学専攻
連絡先
北方生物圏フィールド科学センター 室蘭臨海実験所
Email: ichihara fsc.hokudai.ac.jp
TEL: 0143-22-2846
FAX: 0143-22-4135
オフィスアワー
講義や実習について質問がある場合、また研究室の見学を希望する場合に、教員を直接訪問できます。
訪問受入時間: 随時
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