未分化細胞を介したトランスポゾンの転移誘導に成功!
形態機能学系の伊藤秀臣助教を中心とする研究グループは、環境ストレスで活性化するトランスポゾン(用語解説はこちら)の転移誘導に成功しました。自然界でこのトランスポゾンは37℃程の高温に反応して転写が活性化します。しかし、転写後の転移プロセスは宿主植物に備わっている転移制御機構により抑制されています。今回、高温ストレスを与えたシロイヌナズナの組織を脱分化させ、未分化細胞を作成して、再度再分化個体を作成しました。この再分化個体において、トランスポゾンの転移を解析した結果、新規の転移が観察されました。このことから、今回解析にもちいた高温活性型のトランスポゾンは、未分化細胞を介して転移することが示されました。さらに、シロイヌナズナと同じアブラナ科の植物であるダイコンにおいても未分化細胞を介したトランスポゾンの転移誘導に成功しました。人工的に転移を誘導できるこの研究結果は、育種上重要な植物への応用も期待できる有用な技術であると考えられます。
発表論文: Masuta Y, Nozawa K, Takagi H, Yaegashi H, Tanaka K, Ito T, Saito H, Kobayashi H, Matsunaga W, Masuda S, Kato A, and Ito H. (2017) Inducible Transposition of a Heat-Activated Retrotransposon in Tissue Culture. Plant Cell Physiol. 58: 375–384. (https://academic.oup.com/pcp/article/doi/10.1093/pcp/pcw202/2737549/Inducible-Transposition-of-a-Heat-Activated)