形態機能学講座に在籍した留学生Sunさんが論文を出版
内容は「病原体ストレスに応答した植物プロテアソームの機能変換」です。共同研究者の方々に解説していただきました。
細菌やウィルスといった病原体から身を守ることは生物に必須の能力です。私たち人間と同じように,植物もまた病原体の攻撃に対する優れた防御応答機構を備えています。そうした環境ストレス応答において,ユビキチン・プロテアソームシステム(UPS)は,タンパク質の能動的分解を制御することで,様々な細胞機能を制御しています。
私たちは,最新のプロテオミクス解析技術を駆使することで,これまで困難であった植物プロテアソームのアフィニティー精製および詳細なサブユニット構成の実態を明らかにすることに成功しました。さらに,病原体感染のシグナル物質となるFlg22を処理した植物から精製したプロテアソームでは,通常型に比べてサブユニット構成が変化し,プロテアソームの活性が上昇していることを発見しました。これらの結果は,植物の病原体応答では,何らかの翻訳後制御(下図,PTM)により植物のプロテアソーム機能変換が起こっていることを示唆しています。哺乳類のプロテアソームは病原体感染時の抗体産生に重要な関与することが知られています。抗体による免疫システムを用いない植物は,動物とは異なる独自のプロテアソーム機能が防御応答に貢献していることが予想されます。こうした研究の成果として,病気に強い有用作物の作出につながることが期待されます。
論文はこちらです。(クリックすると、ウェブサイトの原著論文にアクセスできます。)
Sun H, Fukao Y, Ishida S, Yamamoto H, Maekawa S, Fujiwara M, Sato T* and Yamaguchi J (2013) Proteomics analysis reveals a highly heterogenous proteasome composition and the post-translational regulation of peptidase activity under pathogen signaling in plants. Journal of Proteome Research, in press
図.環境ストレスに応答したプロテアソームサブユニット機能の翻訳後制御
モデル(左)とアフィニティー精製/2次元電気泳動/MS解析結果(右)