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黒岩先生 文部科学大臣表彰 若手科学者賞を受賞

 日本遺伝学会の推薦を受けて、黒岩麻里先生が平成25年度科学技術分野の文部科学大臣表彰のうち、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた40歳未満の若手研究者を対象「高度な研究開発能力を有する若手研究者を対象とした若手科学者賞」を受賞されることになりました。
 表彰式は平成25年4月16日(火曜日)12時10分から、文部科学省3階講堂で行われます。
 受賞の対象となった業績は
 「Y染色体をもたない哺乳類種の性染色体進化の研究」
 です。
 生物科学科の人にはおなじみの話かもしれませんが、ちょっとだけ解説。
 哺乳類のXとY染色体はもともと相同な染色体であったのですが、長い進化の年月をかけて、Y染色体は退化。現在のヒトのX染色体には1000個以上の遺伝子が存在するのに対し、Y染色体には30個程度しか残されていません。Y染色体はこのまま消えてしまうと、男性が生まれなくなるのか、とはおそらく誰も思っていない(笑)と思います。

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 哺乳類のY染色体とオスの未来はどうなるのか、ということで黒岩先生が目をつけたのが、南西諸島に生息するトゲネズミ属三種。沖縄に生息するオキナワトゲネズミは、XX/XY型の性染色体をもつのですが、奄美大島と徳之島にそれぞれ生息するアマミトゲネズミとトクノシマトゲネズミは、Y染色体をもたずXO型なのですが、ちゃんとオスとメスがいます。

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 XO型トゲネズミはどうやってオスとメスが決まっているのかを解析した結果、多くの哺乳類でオスを決める性決定遺伝子SRYが失われているものの、別の染色体上に新しい性決定遺伝子が獲得されていることを発見、さらに元々Y染色体にあった遺伝子のほとんどが、X染色体に移動することで、Y染色体消失後も保存されていることがわかりました。一方、XY型トゲネズミのY染色体は、哺乳類のものとしては超巨大(といっても約5倍)であることが判明。これは、Y染色体と他の染色体が融合して新しい巨大なY染色体を作り出すことで、Y染色体の消失を回避したことが明らかとなったのです。

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 というわけで、トゲネズミ属を使っての比較研究から、Y染色体の消失が起こったとしても、それがすぐにオスの消滅にはつながるものではないこと、またY染色体進化にはいくつかの過程が存在することを示したというおもしろい発見が受賞につながったとのことです。
 黒岩先生、おめでとうございます。