自発的な行動の開始にかかわる脳神経メカニズムの発見(加賀谷博士、高畑教授)
自発的な行動の開始にかかわる脳神経メカニズム:歩行運動の自発的開始に先行する運動準備発射活動をアメリカザリガニ脳で発見
ほとんどの動物は,外から感覚刺激を与えられなくても多様な行動を開始します。このような自発性の行動は,脊椎動物・無脊椎動物にかかわらず広く観察されています。ところがこれまでは,行動制御の神経メカニズムを研究する場合,実験者が感覚刺激を与えて,それに対して を調べる場合がほとんどでした。
今回, 行動生理学研究室の加賀谷博士と高畑教授は,アメリカザリガニを用いて自発性の歩行にかかわる脳内ニューロン活動を解析し,特定のニューロンが行動開始の数秒も前にスパイク活動の増加を示すことを明らかにしました。このような脳内の運動準備発射活動はヒトを含む脊椎動物では以前から知られていますが,無脊椎動物では今回はじめてその運動出力効果も含めて詳細を明らかにすることができました。
さらに行動の開始に加えて,行動の維持や停止にかかわる脳内のニューロンも発見し,このような異なる機能的役割を担ったニューロンの協調的な活動で,柔軟な歩行が制御されていると考えられます。この詳細な結果は,1月27日の The Journal of Neuroscience に発表されました。
球形トレッドミル上を歩くアメリカザリガニ
自発性歩行開始に先行する運動準備発射活動
今後,アメリカザリガニを用いることにより他の脊椎動物を用いた場合では困難な問題,すなわち単一ニューロンレベル,シナプス接続されたネットワークレベルで,どのようなメカニズムで自発性行動が生み出されるのかについて,より詳細な解析が期待できます。さらに脊椎動物と比較することで,自発性行動の進化についての理解が深まることも期待できます。