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理学部生物科学科 生物学専修の学生実習で新種ヒモムシ発見!

理学部生物科学科 生物学専修では、野外で実施される魅力的な実習が用意されています。今回そのような3年生対象の学生実習の一つ「臨海実習I」に参加した学生たちが採集した標本に新種が含まれることがわかり、多様性生物学・進化学系の柁原宏准教授が記載論文を発表しました。学生実習で新種の紐形動物(ヒモムシの仲間)発見です! 以下、柁原准教授本人による解説です。


今年は新型コロナウイルスの影響で厚岸町での「臨海実習I」が叶わず残念でなりません。ところで、これまでの実習で多くの学生が全身泥だらけになって奮闘した真竜(眞龍)浜という干潟が厚岸大橋のたもとから数百mほど離れたところにあるのですが、そこではオロチヒモムシと呼ばれる比較的稀な、やや大型の紐形動物が時おり採れていました。

厚岸のオロチヒモムシは山岡貞一氏(北大理学部動物学科第7期卒)によって1940年に初めて報告されてからこれまで80年の間Cerebratulus marginatus Renier, 1804(タイプ産地はイタリアのアドリア海)と同定されてきました。ところが、私がこの実習を担当してから去年までに採れた標本の形態を詳しく観察し、核とミトコンドリアのいくつかの遺伝子の塩基配列を他に知られているものと比較したところ、それは真のCerebratulus marginatusだけでなくその他全ての既知種とも異なることが明らかになったため、和名に因んだCerebratulus orochiという学名をつけて新種記載しました。

2019年度臨海実習I担当ティーチング・フェローとして活躍した大矢佑基さん(当時博士課程2年生)が実習室で撮影したオロチヒモムシのホロタイプ(体長32 cm)

形態の類似に基づいて他所(分類学の発展の歴史上多くの場合欧州)から原記載されたものと一度は同じと見做された日本産種が実は別種であったという事例は他の生き物の群でも数多く知られているのですが、オロチヒモムシもそのような例の一つだった訳です。今回の発見は学生実習が地域の生物多様性の解明に少なりと雖も貢献し得ることを体現するのみならず、実習で採れるような比較的身近な生き物たちの間にもまだまだ多くの未記載種が潜んでいる可能性を示す好例とも申せます。

2003年から2019年まで臨海実習Iに参加してオロチヒモムシを採集してくださった皆さん――就中ホロタイプを採ったランジャニ・ラジャゴパルさん(和多研・4年生)と原田遼河さん(森川研・4年生)――、ホロタイプの生時の様子を撮影してくださった大矢佑基さん(柁原研・博士課程3年生;日本学術振興会特別研究員)、そしていつも実習でお世話になっている厚岸臨海実験所のスタッフの皆様――とりわけ技術専門職員の濱野章一さんと桂川英徳さん――のご協力に心から感謝いたします。本研究は科研費基盤(C)17K07520の助成を一部受けて行われました。

後にホロタイプ(学名を担う正基準標本)に指定されることになったオロチヒモムシ個体を掘り当てたランジャニ・ラジャゴパルさん(右)と原田遼河さん(左)(当時3年生;2019年6月20日柁原撮影)

論文:Kajihara, H. (2020) Redescription of Cerebratulus marginatus auct. (Nemertea: Pilidiophora) from Hokkaido, Japan, as a new species. Zootaxa 4819 (2): 295–315.

 

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